妊婦要因と低出生体重児,流産・死産児の関連性:保健師・助産師による母子健康手帳の全例交付と児の出生状況の把握
目的 国の「健やか親子21」についての2014年の最終評価において,悪化した項目のひとつに低出生体重児の増加が挙げられた。久留米市における低出生体重児と流産・死産児の数をさらに減らすためにも,その原因として新たなリスク要因はないかの探求を含め今後の対策につなげることを目的に調査研究を行った。方法 調査対象は,2014年度に妊娠届出を提出後に,久留米市以外に転出あるいは出生時体重の追跡が困難なケースを除いた2,986人の妊婦である。妊娠届出書の記載内容と出生時体重とを連結させ,低出生体重,流産・死産と妊婦属性との関連性について検討を行った。単変量解析で関連性が示唆された変数について,低出生体重児...
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Published in | 日本公衆衛生雑誌 Vol. 66; no. 8; pp. 397 - 406 |
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Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本公衆衛生学会
15.08.2019
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Summary: | 目的 国の「健やか親子21」についての2014年の最終評価において,悪化した項目のひとつに低出生体重児の増加が挙げられた。久留米市における低出生体重児と流産・死産児の数をさらに減らすためにも,その原因として新たなリスク要因はないかの探求を含め今後の対策につなげることを目的に調査研究を行った。方法 調査対象は,2014年度に妊娠届出を提出後に,久留米市以外に転出あるいは出生時体重の追跡が困難なケースを除いた2,986人の妊婦である。妊娠届出書の記載内容と出生時体重とを連結させ,低出生体重,流産・死産と妊婦属性との関連性について検討を行った。単変量解析で関連性が示唆された変数について,低出生体重児と流産・死産児をそれぞれ目的変数として,多重ロジスティック回帰分析を行った。結果 多重ロジスティック回帰分析の結果,低出生体重児と有意に独立して関連した妊婦要因は「35歳以上(オッズ比1.41),」「身長158 cm未満(オッズ比1.45)」,「非妊娠時のBMI18.5未満(オッズ比1.48)」,「今回の妊娠中に医師から身体に異常を指摘された(オッズ比2.20)」であった。流産・死産児と有意に独立して関連した要因は,「35歳以上(オッズ比2.05)」,「喫煙(オッズ比3.42)」であった。また,「飲酒を止めた(オッズ比0.51)」はリスクを有意に減少させた。結論 「年齢」や「非妊娠時のBMI」は変更できない事実であるため,とくに35歳以上の妊婦に対しては,妊娠時の異常を早期に発見するために定期的な妊婦健診を勧めたり,妊婦同士を集め互いの交流の場を提供して精神面での支援をすでに行っている。また,若い世代へは,35歳以上から低出生体重児や流産・死産のリスクが上がること,やせた妊婦からは低出生体重児の危険性が高まるなどの啓発を引き続き行いたい。「適正体重の維持」,「喫煙」,「飲酒」や社会経済的要因である「相談体制・支援者の不足」,「経済面での不安」については,保健師による保健指導や多職種による支援介入により改善が期待できる。久留米市に設置された「こども子育てサポートセンター」では,妊娠・出産・子育て期の家庭を専門職が協力して継続的なサポートを行うことにより,低出生体重児や流産・死産児を減らすことに寄与するかもしれない。 |
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ISSN: | 0546-1766 2187-8986 |
DOI: | 10.11236/jph.66.8_397 |