病院に勤務する看護師の分布とその関連要因の検討
目的 少子高齢化の進行するなか,拡大する医療やケアのニーズの担い手である看護師の確保には,分布や動向の把握が重要である。しかし,看護師の就業施設ごとの分布の調査や関連要因に関する報告は少ない。本研究では,病院に勤務する看護師(以下,病院看護師とする)の経年的な二次医療圏単位の分布の変化を明らかにするとともに,診療報酬改定などの政策や地域の社会経済的特性,看護師需給に関する変数との関連を明らかにすることを目的とした。 方法 公開されている統計を使用し,生態学的研究を行った。調査期間を2002年から2011年までとし,この間一貫したデータの得られる38都道府県274の二次医療圏を対象とした。まず,...
Saved in:
Published in | 日本公衆衛生雑誌 Vol. 63; no. 7; pp. 367 - 375 |
---|---|
Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本公衆衛生学会
2016
|
Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0546-1766 2187-8986 |
DOI | 10.11236/jph.63.7_367 |
Cover
Summary: | 目的 少子高齢化の進行するなか,拡大する医療やケアのニーズの担い手である看護師の確保には,分布や動向の把握が重要である。しかし,看護師の就業施設ごとの分布の調査や関連要因に関する報告は少ない。本研究では,病院に勤務する看護師(以下,病院看護師とする)の経年的な二次医療圏単位の分布の変化を明らかにするとともに,診療報酬改定などの政策や地域の社会経済的特性,看護師需給に関する変数との関連を明らかにすることを目的とした。 方法 公開されている統計を使用し,生態学的研究を行った。調査期間を2002年から2011年までとし,この間一貫したデータの得られる38都道府県274の二次医療圏を対象とした。まず,二次医療圏の人口と病院看護師数をもとめ,ジニ係数を計算した。さらに,二次医療圏の病院看護師数を被説明変数,人口,65歳以上人口割合,人口密度,一人あたり県民所得,全国を 6 区分した地域,看護師学校養成所の卒業生数,前年の看護師の一時間あたり賃金を説明変数とした,マルチレベル線形回帰モデルによる解析を行った。 結果 調査期間中,二次医療圏の人口あたり病院看護師数は増加の傾向がみられた。全体としてジニ係数は減少していたが,2007年と2008年には増加がみられた。マルチレベル線形回帰モデルから,二次医療圏の病院看護師数は年ごとの増加と人口との関連に加え,一人あたり県民所得が高いこと,65歳以上人口割合が高いこと,関東以外の地域であること,看護師学校養成所の卒業生が多いこと,および前年の看護師の一時間あたり賃金が高いことと関連していた。 結論 二次医療圏ごとの病院看護師の分布格差は全体として減少傾向にあるが,2006年度診療報酬改定後の約 2 年間のみ増加傾向がみられ,政策の影響を受けた可能性が示唆された。また,二次医療圏の病院看護師数と関連する要因として,地域の社会経済的特性及び看護師学校養成所の卒業生数,前年の看護師の一時間あたり賃金が関連していることが示唆された。 |
---|---|
ISSN: | 0546-1766 2187-8986 |
DOI: | 10.11236/jph.63.7_367 |