新型コロナウイルス感染ががん診療に及ぼす影響:栃木県18施設のがん登録を用いた検討

目的 新型コロナウイルス感染拡大が,栃木県のがん診療へ与える影響を,栃木県内のがん診療を担う主要な医療機関を対象に,院内がん登録のデータを用いて感染拡大前(2019年診断症例)と感染拡大後(2020年診断症例)を比較し,明らかにすることを目的とした。方法 栃木県がん診療連携協議会18施設のがん登録を2019年と2020年診断症例について,性別,年齢階級別,診断時住所別,診断月別,部位別,進展度別,治療法別に比較した。発見経緯については,検診に関係する胃・大腸・肺・乳房・子宮頸部・前立腺について検討した。結果 18施設の登録数は,2019年は19,748件,2020年は18,912件であった。2...

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Published in日本公衆衛生雑誌 Vol. 70; no. 9; pp. 564 - 571
Main Authors 藤田, 伸, 大木, いずみ
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本公衆衛生学会 15.09.2023
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ISSN0546-1766
2187-8986
DOI10.11236/jph.23-018

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Summary:目的 新型コロナウイルス感染拡大が,栃木県のがん診療へ与える影響を,栃木県内のがん診療を担う主要な医療機関を対象に,院内がん登録のデータを用いて感染拡大前(2019年診断症例)と感染拡大後(2020年診断症例)を比較し,明らかにすることを目的とした。方法 栃木県がん診療連携協議会18施設のがん登録を2019年と2020年診断症例について,性別,年齢階級別,診断時住所別,診断月別,部位別,進展度別,治療法別に比較した。発見経緯については,検診に関係する胃・大腸・肺・乳房・子宮頸部・前立腺について検討した。結果 18施設の登録数は,2019年は19,748件,2020年は18,912件であった。2020年は2019年に対して836件の減少,前年比は0.958(4.2%減少)であった。2019年,2020年でそれぞれ男性は11,223件,10,511件(712件,6.3%減少),女性は8,525件,8,401件(124件,1.5%減少)で,男性の減少が大きかった。男女とも年齢階級別では,40歳未満で減少を認めず,それ以上の年齢で減少した。診断時住所別では,県内の登録数が減少したが,県外は減少を認めなかった。診断月では,5月と8月の登録数の減少が顕著であった。発見経緯として,検診発見による登録数,割合はともに減少した。部位別では,がん検診に関係する胃・肺・大腸・乳房・子宮頸部・前立腺は減少し,全登録の減少数836件に対して689件(82.4%)を占めた。登録数が減少しなかった部位は,口腔・咽頭,膵臓,骨・軟部,子宮体部,膀胱,悪性リンパ腫,白血病であった。進展度としては,上皮内,限局,領域リンパ節転移は減少したが,遠隔転移や隣接臓器浸潤の登録数の減少はみられなかった。結論 栃木県における新型コロナウイルス感染拡大ががん診療に及ぼす影響について栃木県がん診療連携協議会のがん登録データを用いて明らかにした。2020年は2019年と比較して登録数が減少し,影響は年齢,医療機関,部位,検診状況,進展度によって異なった。とくに検診による減少が顕著であった。また5月,8月の登録数の減少は感染拡大時期や緊急事態宣言などの影響が考えられた。
ISSN:0546-1766
2187-8986
DOI:10.11236/jph.23-018