受検者が HIV 感染告知担当者に伝えた感染経路と「実際の HIV 感染経路」との相違についての検討

目的 HIV 感染告知をされる際に,受検者は HIV 感染告知担当者に,自身が推定する「実際の HIV 感染経路」を伝えているのかどうか,「実際の HIV 感染経路」と異なる感染経路を伝える関連要因は何かを明らかにすること,HIV 感染告知された受検者が,自身の推定する実際の経路をそのまま HIV 感染告知担当者に伝えられる告知の場をどのようにして作れるか,その考察を加えること。 方法 無記名自記式質問調査である「HIV 陽性告知に関する調査」をウェブにおいて実施した。調査期間は2010年 9 月から12月までとした。日本国内在住の HIV 陽性者237人から得られたデータを分析した。「実際の...

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Published in日本公衆衛生雑誌 Vol. 62; no. 3; pp. 106 - 116
Main Authors 井上, 洋士, 生島, 嗣, 矢島, 嵩, 高久, 陽介
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本公衆衛生学会 2015
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ISSN0546-1766
2187-8986
DOI10.11236/jph.62.3_106

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Summary:目的 HIV 感染告知をされる際に,受検者は HIV 感染告知担当者に,自身が推定する「実際の HIV 感染経路」を伝えているのかどうか,「実際の HIV 感染経路」と異なる感染経路を伝える関連要因は何かを明らかにすること,HIV 感染告知された受検者が,自身の推定する実際の経路をそのまま HIV 感染告知担当者に伝えられる告知の場をどのようにして作れるか,その考察を加えること。 方法 無記名自記式質問調査である「HIV 陽性告知に関する調査」をウェブにおいて実施した。調査期間は2010年 9 月から12月までとした。日本国内在住の HIV 陽性者237人から得られたデータを分析した。「実際の HIV 感染経路」と異なる感染経路を HIV 感染告知担当者に伝えることに関連する因子の分析については,目的変数として「『実際の HIV 感染経路』と HIV 感染告知担当者に伝えた感染経路との相違」,説明変数として性別,年代,居住地域,感染経路,HIV 検査の承諾,HIV 感染告知年代,HIV 感染告知担当者の対応についての総合評価を各々投入して,粗オッズ比と95%信頼区間を算出した。 結果 「実際の HIV 感染経路」と,HIV 感染告知担当者に伝えた感染経路は同じであったのは全体の75.1%,異なる感染経路を伝えたとする人は全体の17.7%であった。HIV 感染告知担当者に対して同性間性的接触と伝えた人のなかで実際にも感染経路が同性間性的接触である人の割合は97.5%であったのに対し,異性間性的接触と HIV 感染告知担当者に対して伝えた人のなかでは「実際の HIV 感染経路」も異性間性的接触である人の割合は64.3%,同性間性的接触も28.6%含まれていた。同性か異性か不明の性的接触と伝えた人のなかでは,実際には同性間性的接触である人が47.4%であった。HIV 感染告知担当者の対応についての総合評価が「良い」とした人に比して「悪い」とした人で,異なる感染経路を伝える人が有意に多くなっており,粗オッズ比2.51(95%CI:1.26–5.01)であった。 結論 エイズ動向委員会による HIV 感染者数・AIDS 患者数における同性間性的接触者の割合は実際のものよりも低い可能性が推察された。受検者が「実際の HIV 感染経路」を HIV 感染告知担当者に伝えない要因として HIV 感染告知担当者の望ましくない対応が示され,受検者に正確に感染経路を打ち明けてもらうためにはそれらの改善の必要性がある。
ISSN:0546-1766
2187-8986
DOI:10.11236/jph.62.3_106