周術期等口腔機能管理におけるかかりつけ歯科医の役割
今後ますます高齢化が進む超高齢社会の我が国において,歯科医療は大きな転換期を迎えている.これまでの健常者型歯科医療から,治療の難度やリスクが増加する高齢者型歯科医療への転換が必要である.なかでもがん患者の手術,化学療法,放射線治療,緩和ケアなど(以下周術期等)の口腔管理は現在積極的に取り組まれている重要な課題の一つである.周術期等口腔機能管理の有用性は多くの研究で示されており,現在各病院において取り組みが積極的に行われている.現状では周術期等口腔機能管理は併設された歯科を含め病院内で完結されることが多いが,効果的に口腔管理を行うには病院での口腔管理終了後のかかりつけ歯科への連携が重要であり,か...
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Published in | 保健医療科学 Vol. 69; no. 4; pp. 357 - 364 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
国立保健医療科学院
30.10.2020
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Subjects | |
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ISSN | 1347-6459 2432-0722 |
DOI | 10.20683/jniph.69.4_357 |
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Summary: | 今後ますます高齢化が進む超高齢社会の我が国において,歯科医療は大きな転換期を迎えている.これまでの健常者型歯科医療から,治療の難度やリスクが増加する高齢者型歯科医療への転換が必要である.なかでもがん患者の手術,化学療法,放射線治療,緩和ケアなど(以下周術期等)の口腔管理は現在積極的に取り組まれている重要な課題の一つである.周術期等口腔機能管理の有用性は多くの研究で示されており,現在各病院において取り組みが積極的に行われている.現状では周術期等口腔機能管理は併設された歯科を含め病院内で完結されることが多いが,効果的に口腔管理を行うには病院での口腔管理終了後のかかりつけ歯科への連携が重要であり,かかりつけ歯科医が担う役割を明確にしておく必要がある.平均寿命の延長により今後さらに周術期等口腔機能管理が必要とされる患者は増加すると考えられる.かかりつけ歯科医は患者がいつ周術期等の治療が必要になっても良いように,日頃より患者の口腔内の感染源の除去や口腔機能の維持を目指した歯科治療や口腔管理を行うと共に,医学的知識の蓄積や,口腔環境が全身に与える影響について患者への啓蒙活動を行う必要がある.また周術期後の患者では感染性心内膜炎や顎骨壊死など注意が必要な場合もあるので適切な既往歴の聴取が必須である.今後さらに周術期等口腔機能管理において病診連携が必要となると思われるが,連携をスムーズに進めるためには病院と地域歯科医師会さらにはかかりつけ歯科との連携システムの構築が必要である.病診連携や医科歯科連携を進めることは患者のQOL向上に役立つことであり,周術期等口腔機能管理システムを構築することはその推進に大きく寄与するものと思われる. |
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ISSN: | 1347-6459 2432-0722 |
DOI: | 10.20683/jniph.69.4_357 |