非代償性肝硬変の難治性腹水に対するデンバー腹腔-静脈シャントの適応と効果
腹腔-静脈シャント(シャント)術は,腹腔内と中心静脈を一方向弁付きのシリコンカテーテルで短絡し,腹水を強制的に大循環に還流し,難治性腹水を減少・消失させる治療法である.多くは非代償性肝硬変の大量腹水が対象となるが,この門脈圧亢進状態下の腹水貯留では,門脈圧>腹腔内圧(腹水圧)>中心静脈圧(CVP)の順で,圧勾配が存在している.シャントによる腹水還流は,術後早期は腹水圧―CVPの圧差に依存し,晩期は呼吸に伴う腹腔圧―胸腔圧差によって形成される.大循環に還流された腹水は,尿として排泄されるため,術後1~2週で腹水圧―CVPとなり,CVPも次第に低下正常化する.晩期のシャント内流量は,門脈内から腹腔...
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Published in | Japanese Journal of Portal Hypertension Vol. 19; no. 1; pp. 19 - 24 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本門脈圧亢進症学会
2013
The Japan Society for Portal Hypertension |
Subjects | |
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ISSN | 1344-8447 2186-6376 |
DOI | 10.11423/jsph.19.19 |
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Summary: | 腹腔-静脈シャント(シャント)術は,腹腔内と中心静脈を一方向弁付きのシリコンカテーテルで短絡し,腹水を強制的に大循環に還流し,難治性腹水を減少・消失させる治療法である.多くは非代償性肝硬変の大量腹水が対象となるが,この門脈圧亢進状態下の腹水貯留では,門脈圧>腹腔内圧(腹水圧)>中心静脈圧(CVP)の順で,圧勾配が存在している.シャントによる腹水還流は,術後早期は腹水圧―CVPの圧差に依存し,晩期は呼吸に伴う腹腔圧―胸腔圧差によって形成される.大循環に還流された腹水は,尿として排泄されるため,術後1~2週で腹水圧―CVPとなり,CVPも次第に低下正常化する.晩期のシャント内流量は,門脈内から腹腔内に移動する水のみとなり,量も減少してくる.この圧勾配全般の減少による術後の食道静脈瘤消退例が存在する.以上のことにより,術前の門脈圧亢進状態には,腹水貯留自体が,圧亢進因子として加味している可能性がある. |
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ISSN: | 1344-8447 2186-6376 |
DOI: | 10.11423/jsph.19.19 |