十二指腸下行脚に嵌頓した胆石イレウスの1例

症例は93歳,女性.嘔吐を主訴に受診した.腹部CTで胆嚢と十二指腸球部の瘻孔形成,十二指腸下行脚に55mm大の結石を認めた.胆嚢十二指腸瘻,胆石イレウスの診断で入院とし,第2病日に内視鏡的摘出を試みるも困難であった.保存的加療の長期化を避けるべく,経鼻的に減圧治療および経管栄養を開始し,第6病日に手術を施行した.術中十二指腸下行脚に嵌頓した結石を認め,用手的な移動を試みるも水平脚までの移動しかかなわなかった.十二指腸水平脚を切開し結石を摘出し,十二指腸減圧目的に胃空腸バイパス術を併施した.術後経過は良好で,第31病日に転院となった.十二指腸に嵌頓した胆石イレウスはまれであり,明確な治療方針は定...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 83; no. 6; pp. 1141 - 1146
Main Authors 甲津, 卓実, 池野, 嘉信, 安宅, 亮, 多賀, 亮, 松林, 潤, 廣瀬, 哲朗
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2022
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Summary:症例は93歳,女性.嘔吐を主訴に受診した.腹部CTで胆嚢と十二指腸球部の瘻孔形成,十二指腸下行脚に55mm大の結石を認めた.胆嚢十二指腸瘻,胆石イレウスの診断で入院とし,第2病日に内視鏡的摘出を試みるも困難であった.保存的加療の長期化を避けるべく,経鼻的に減圧治療および経管栄養を開始し,第6病日に手術を施行した.術中十二指腸下行脚に嵌頓した結石を認め,用手的な移動を試みるも水平脚までの移動しかかなわなかった.十二指腸水平脚を切開し結石を摘出し,十二指腸減圧目的に胃空腸バイパス術を併施した.術後経過は良好で,第31病日に転院となった.十二指腸に嵌頓した胆石イレウスはまれであり,明確な治療方針は定まっていない.近年,内視鏡的治療成功例の報告もあるが,多くは手術加療を要する.高齢に多いとされる本疾患では,全身状態や併存疾患といった患者背景に加え,嵌頓部位も踏まえ個々の症例ごとに治療法を検討する必要がある.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.83.1141