小川原湖における 2-MIB 産生シアノバクテリアの多様性: 検鏡法および分子生態学的アプローチ

2-MIB に起因するカビ臭は水道水の品質低下や漁獲物等への着臭被害を引き起こし,世界的な問題となっている。湖沼における 2-MIB 産生シアノバクテリアとしてはシュードアナベナ属が多く確認されており,長年研究が行われてきたが,未だ十分な解決には至っていない。本研究ではカビ臭が問題となっている青森県小川原湖において,検鏡観察とともに,分子生物学的手法としてカビ臭産生種に特化した qPCR,およびアンプリコンシーケンス解析を行った。検鏡定量によるカビ臭産生シュードアナベナ様シアノバクテリアは,主に秋冬に出現する特徴を示したが,春夏にもまれに出現した。qPCR で定量したカビ臭産生株密度と検鏡値に...

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Published in水産増殖 Vol. 68; no. 1; pp. 9 - 23
Main Authors 静, 一徳, 樽屋, 啓之, 中山, 奈津子, 柿野, 亘, 眞家, 永光, 池永, 誠, 松谷, 紀明, 村瀬, 潤
Format Journal Article
LanguageEnglish
Published 日本水産増殖学会 2020
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ISSN0371-4217
2185-0194
DOI10.11233/aquaculturesci.68.9

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Summary:2-MIB に起因するカビ臭は水道水の品質低下や漁獲物等への着臭被害を引き起こし,世界的な問題となっている。湖沼における 2-MIB 産生シアノバクテリアとしてはシュードアナベナ属が多く確認されており,長年研究が行われてきたが,未だ十分な解決には至っていない。本研究ではカビ臭が問題となっている青森県小川原湖において,検鏡観察とともに,分子生物学的手法としてカビ臭産生種に特化した qPCR,およびアンプリコンシーケンス解析を行った。検鏡定量によるカビ臭産生シュードアナベナ様シアノバクテリアは,主に秋冬に出現する特徴を示したが,春夏にもまれに出現した。qPCR で定量したカビ臭産生株密度と検鏡値には正の相関がみられたが,検鏡値に占めるカビ臭産生株割合は8%であり,検鏡値にカビ臭非産生株もかなり含まれていると考えられた。カビ臭産生シュードアナベナ株は2株存在し,検鏡では捉えきれない種・株レベルでの変動が存在することが確認された。
ISSN:0371-4217
2185-0194
DOI:10.11233/aquaculturesci.68.9