パーキンソン病患者の視覚に介入して歩行障害を改善する眼鏡型ウェアラブル装置の開発

[背景]パーキンソン病(PD)は振戦・筋強剛・無動・姿勢反射障害を運動症状とする神経変性疾患であり、根治療法のない難病である。PDの歩行障害は、前傾前屈姿勢で小刻み歩行となる特徴があり、特に歩き始めの第一歩が出にくいすくみ足は、転倒・骨折を通じて患者を要介護状態に陥れる大きな臨床的問題である。またすくみ足は薬物療法に反応せず、治療困難である。[目的]奇異性歩行とは、進行方向の床面上の目印の存在によってすくみ足が軽減し、歩行障害が改善するPD患者の特徴である。本研究では、奇異性歩行を誘発してPD患者の歩行障害を改善する眼鏡型ウェアラブル装置を開発した。[方法]本装置は、搭載するデプスカメラから得...

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Published in生体医工学 Vol. Annual57; no. Abstract; p. S228_1
Main Authors 長島, 優, 徳重, 真一, 岩田, 淳, 戸田, 達史
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本生体医工学会 2019
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Summary:[背景]パーキンソン病(PD)は振戦・筋強剛・無動・姿勢反射障害を運動症状とする神経変性疾患であり、根治療法のない難病である。PDの歩行障害は、前傾前屈姿勢で小刻み歩行となる特徴があり、特に歩き始めの第一歩が出にくいすくみ足は、転倒・骨折を通じて患者を要介護状態に陥れる大きな臨床的問題である。またすくみ足は薬物療法に反応せず、治療困難である。[目的]奇異性歩行とは、進行方向の床面上の目印の存在によってすくみ足が軽減し、歩行障害が改善するPD患者の特徴である。本研究では、奇異性歩行を誘発してPD患者の歩行障害を改善する眼鏡型ウェアラブル装置を開発した。[方法]本装置は、搭載するデプスカメラから得られる三次元奥行き情報を用いて周囲の状況を臨機応変に認識し、奇異性歩行を誘発する視覚的目印を、透過型スマートグラスを用いて患者の視界に重ね書き表示する。これにより、患者の動きに追随してリアルタイムに視覚的目印を更新し、奇異性歩行を誘発できる。[結果]本装置は、段差や凹凸のある現実的な住環境でPD患者の歩行障害を改善できる。本装置を実際のPD患者へ装着し、歩行中の視覚的目印提示の概念実証に成功した。
ISSN:1347-443X
1881-4379
DOI:10.11239/jsmbe.Annual57.S228_1