1979年5月初め頃の日本南岸における準定常的梅雨前線の形成について

1979年5月初めにみられた日本南岸の準定常的梅雨前線の形成と、それに関係した東アジア大規模場の傾圧性の季節遷移について、観測資料に基づき議論する。 チベット高原南回りジェットに対応する日本南岸の前線帯は、4月には移動性高低気圧の通り道としての特徴をもつ。一方、5月になると、30°N付近を総観規模(あるいは大きいメソの規模)の低気圧の通過後でも、停滞前線に対応する雲帯が25°N付近に維持されやすい。言い換えれば、平均雲量極大ゾーンあるいは平均場の相当温位極大ゾーンとして定義される日本南岸の前線帯は、準定常的な性質を持つようになる(日本付近での準定常的な梅雨前線の形成)。1979年及び1985~...

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Published in気象集誌. 第2輯 Vol. 70; no. 1B; pp. 631 - 647
Main Authors 加藤, 内蔵進, 児玉, 安正
Format Journal Article
LanguageEnglish
Published 公益社団法人 日本気象学会 1992
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Summary:1979年5月初めにみられた日本南岸の準定常的梅雨前線の形成と、それに関係した東アジア大規模場の傾圧性の季節遷移について、観測資料に基づき議論する。 チベット高原南回りジェットに対応する日本南岸の前線帯は、4月には移動性高低気圧の通り道としての特徴をもつ。一方、5月になると、30°N付近を総観規模(あるいは大きいメソの規模)の低気圧の通過後でも、停滞前線に対応する雲帯が25°N付近に維持されやすい。言い換えれば、平均雲量極大ゾーンあるいは平均場の相当温位極大ゾーンとして定義される日本南岸の前線帯は、準定常的な性質を持つようになる(日本付近での準定常的な梅雨前線の形成)。1979年及び1985~1988年の1日2回の地上天気図上の前線の位置の解析により、5月の地上前線は準定常的な前線として出現しやすい事が、他の年についても示された。 5月になると、チベット高原を南北に回るジェットに対応する2つの傾圧帯が日本付近では分離し、日本付近の梅雨前線帯付近及びそのすぐ北側の傾圧性が弱まる。このため5月には傾圧不安定波としての移動性高気圧が発達しにくくなり、それにより前線帯の雲帯が壊されにくくなる事を通じて、準定常的な梅雨前線の維持に好都合な条件が与えられる。 Kato(1985,1987a)は1979年5月後半に起きた大陸上の梅雨前線付近の南北温度傾度の急消失を指摘したが、本研究で示された5月初めの“準定常的”前線帯の形成は、季節進行の中で起きるそれとは別のイヴェントとして認識される。
ISSN:0026-1165
2186-9057
DOI:10.2151/jmsj1965.70.1B_631