蛋白尿発現の分子機構:ネフリンのネフローゼ症候群における臨床的意義

ラット腎糸球体上皮細胞(GEC)足突起間スリット膜に対する単クローン抗体投与によりラットに高度の蛋白尿が惹起されることやスリット膜構成分子ネフリンの遺伝子レベルにおける異常が重症の先天性ネフローゼ症候群をもたらすことなどから,スリット膜が,最終的に高分子透過阻止に関与することが明らかにされた.ネフリンが発端となり,ポドシン, CD2APなどGEC,とりわけスリット膜関達分子の遺伝子レベルにおける異常が蛋白尿ないし家族性の糸球体硬化症をもたらすことが相次いで報告されている.新しく登場する分子も含めたこれら諸分子の相互関係の解明をとうして, GECの構造・機能を制御する情報伝達系の詳細が明らかにさ...

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Published in日本内科学会雑誌 Vol. 92; no. 7; pp. 1337 - 1343
Main Authors 河内, 裕, 清水, 不二雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本内科学会 2003
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ISSN0021-5384
1883-2083
DOI10.2169/naika.92.1337

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Summary:ラット腎糸球体上皮細胞(GEC)足突起間スリット膜に対する単クローン抗体投与によりラットに高度の蛋白尿が惹起されることやスリット膜構成分子ネフリンの遺伝子レベルにおける異常が重症の先天性ネフローゼ症候群をもたらすことなどから,スリット膜が,最終的に高分子透過阻止に関与することが明らかにされた.ネフリンが発端となり,ポドシン, CD2APなどGEC,とりわけスリット膜関達分子の遺伝子レベルにおける異常が蛋白尿ないし家族性の糸球体硬化症をもたらすことが相次いで報告されている.新しく登場する分子も含めたこれら諸分子の相互関係の解明をとうして, GECの構造・機能を制御する情報伝達系の詳細が明らかにされ,その結果,蛋白尿の合理的な抑制策の確立とそれによる慢性腎不全状態への進展阻止が可能となるものと期待され,その中心的な存在であるネフリンは新しい治療法開発への重要な鍵をにぎる対象として注目され続けていくと思われる.
ISSN:0021-5384
1883-2083
DOI:10.2169/naika.92.1337