全球土壌水分プロジェクトによる土壌水分シミュレーションの評価

全球土壌水分“データセット”を作成するために、全球土壌水分プロジェクト(GSWP)により、10個の異なる陸面モデルが2年間(1987-88)の気象観測値によって駆動された。本研究では、植物が利用可能な表層1mの土壌水分量の観測値を、モデルで得られた同じ物理量と比較した。土壌水分量の観測値はロシア、イリノイ(アメリカ合衆国)、中国、モンゴルの、草地と農業地域から得られた。 どのモデルもどの地域についても実際の土壌水分量をうまく表現してはいない。従って、GSWPは全球土壌水分量を産出できることをまだ実証してはいない。しかしながら、ひとたびバイアスさえ取り除いてしまえば、各モデルは様々な地域の土壌水...

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Published in気象集誌. 第2輯 Vol. 77; no. 1B; pp. 183 - 198
Format Journal Article
LanguageEnglish
Published 公益社団法人 日本気象学会 1999
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Summary:全球土壌水分“データセット”を作成するために、全球土壌水分プロジェクト(GSWP)により、10個の異なる陸面モデルが2年間(1987-88)の気象観測値によって駆動された。本研究では、植物が利用可能な表層1mの土壌水分量の観測値を、モデルで得られた同じ物理量と比較した。土壌水分量の観測値はロシア、イリノイ(アメリカ合衆国)、中国、モンゴルの、草地と農業地域から得られた。 どのモデルもどの地域についても実際の土壌水分量をうまく表現してはいない。従って、GSWPは全球土壌水分量を産出できることをまだ実証してはいない。しかしながら、ひとたびバイアスさえ取り除いてしまえば、各モデルは様々な地域の土壌水分量の季節変化をよく再現していることが分かった。モデルのバイアスは地域ごとに異なるので、単に平均値を用いて修正するだけでは正しい結果は得られない。パラメータをより明確にすること、もしくは物理的・生物的プロセスをもっとよく再現することが、各モデルの改良のためにさらに必要である。 将来のGSWPはもっと長い期間のデータを用いて行なわれるべきであり、流域スケールの検証や、モデルの出力の時間分解能をより細かくすることに重点が置かれるべきである。さらに、衛星計測を取り込むことで増加するであろう土壌水分量の観測値によって、次の研究計画では大いに改善されるであろう。
ISSN:0026-1165
2186-9057
DOI:10.2151/jmsj1965.77.1B_183