外傷性精巣脱出症を合併した成人鼠径ヘルニアの1例

症例は70歳,男性.左鼠径部の膨隆を主訴に当科を受診した.左鼠径部に鶏卵大の膨隆を認め,臥位で膨隆は容易に還納し左鼠径ヘルニアを疑った.視触診で陰嚢内に左精巣は確認できなかった.腹部CTでは,左鼠径部より結腸と大網の脱出を認め,左鼠径ヘルニアと診断した.また,ヘルニア嚢に接して軟部影を認めた.問診にて約50年前に陰嚢部を強打した既往があり,外傷性精巣脱出症を疑った.精巣腫瘍系の腫瘍マーカーは陰性であったが,将来的に悪性化する可能性もあり,鼠径ヘルニア修復術と同時に脱出精巣の摘出術も施行する方針とし,腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術,精巣摘出術を施行した.術中に腹膜鞘状突起を剥離すると精索と繋がる組織...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 82; no. 9; pp. 1749 - 1753
Main Authors 的羽, 大二朗, 種村, 匡弘, 松本, 謙一, 古川, 陽菜, 金, 浩敏, 野中, 亮児
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2021
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Summary:症例は70歳,男性.左鼠径部の膨隆を主訴に当科を受診した.左鼠径部に鶏卵大の膨隆を認め,臥位で膨隆は容易に還納し左鼠径ヘルニアを疑った.視触診で陰嚢内に左精巣は確認できなかった.腹部CTでは,左鼠径部より結腸と大網の脱出を認め,左鼠径ヘルニアと診断した.また,ヘルニア嚢に接して軟部影を認めた.問診にて約50年前に陰嚢部を強打した既往があり,外傷性精巣脱出症を疑った.精巣腫瘍系の腫瘍マーカーは陰性であったが,将来的に悪性化する可能性もあり,鼠径ヘルニア修復術と同時に脱出精巣の摘出術も施行する方針とし,腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術,精巣摘出術を施行した.術中に腹膜鞘状突起を剥離すると精索と繋がる組織を認め,解剖学的に精巣と考えられたため,同組織を摘出した.病理検査では明らかな悪性所見は認めなかった.外傷性精巣脱出症を合併した鼠径ヘルニアの報告例は検索しえた限りでは本邦に無く,文献的考察を加えて報告する.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.82.1749