鍼灸実技における不安全行動:観察による実態把握
【緒言】先行研究では、 鍼灸師養成校における安全教育が十分ではない可能性が示唆されていた。 不十分な教育を受けた学生は、 実技においてさまざまな不安全行動をとる可能性があり、 それらが将来の臨床現場での不安全行動に繋がることが考えられた。 したがって、 本研究では、 鍼灸実技中に学生がとる不安全行動の実態を把握することを目的とした。 【対象と方法】インフォームド・コンセントを得られた鍼灸を学ぶ大学生18名 (3年生12名 [女性5名]、 4年生6名 [女性2名]、 平均年齢21.06歳 [SD=0.68]) を対象に観察研究を実施した。 実技中の学生をビデオカメラで撮影し、 後日、 観察者が映...
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Published in | 全日本鍼灸学会雑誌 Vol. 74; no. 4; pp. 314 - 326 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益社団法人 全日本鍼灸学会
01.11.2024
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Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0285-9955 1882-661X |
DOI | 10.3777/jjsam.74.314 |
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Summary: | 【緒言】先行研究では、 鍼灸師養成校における安全教育が十分ではない可能性が示唆されていた。 不十分な教育を受けた学生は、 実技においてさまざまな不安全行動をとる可能性があり、 それらが将来の臨床現場での不安全行動に繋がることが考えられた。 したがって、 本研究では、 鍼灸実技中に学生がとる不安全行動の実態を把握することを目的とした。 【対象と方法】インフォームド・コンセントを得られた鍼灸を学ぶ大学生18名 (3年生12名 [女性5名]、 4年生6名 [女性2名]、 平均年齢21.06歳 [SD=0.68]) を対象に観察研究を実施した。 実技中の学生をビデオカメラで撮影し、 後日、 観察者が映像を確認しながら作成したチェックリストを用いて不安全行動を記録した。 チェックリストに記載されていない不安全行動については、 自由記述欄にて記録した。 【結果】合計21種類の不安全行動が観察された (チェックリスト9種類、 自由記述12種類)。 チェックリストにおいては、 患者役に触れる 「直前の手指消毒をしない」 患者役に触れた 「直後の手指消毒をしない」 「汚染可能性物質への接触」 が18名全員で観察され、 いずれも生起率は20%を超えていた。 他には 「抜鍼後に施術野を消毒しない」 「配慮の足りない触察」 「単回使用の毫鍼の複数回使用」 が複数名で観察された。 自由記述欄では 「必要がない時に患者役に触る」 「取り出した酒精綿を容器に戻す」 「酒精綿の使い回し」 といった行動が複数名で観察された。 これら複数名で観察された行動では、 学年間で生起者の偏りがみられた。 【考察】実技中に不安全行動が発生する背景には、 安全に関するルールの不統一状態、 ヒューマンエラー、 および様々な心理的要因が影響している可能性がある。 これらの行動を低減するためには、 従来の安全教育に加えて、 標準化された教育手法の導入や、 心理的要因に基づく教育と対策が必要であると考えられた。 |
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ISSN: | 0285-9955 1882-661X |
DOI: | 10.3777/jjsam.74.314 |