児童養護施設における虐待を受けた思春期の子どもへの心理的支援―自己制御力の課題を中心に

本論文では,虐待を受けて児童養護施設に入所した思春期の子どもの事例を取り上げた.そのような思春期の子どもへの心理的支援について,自己制御力の課題を中心に考察することが,本論文の目的である.入所後の彼は衝動や欲求をコントロールし,ルールに沿った形で折り合いをつけることができず,万引き・夜間徘徊・破壊行為といった様々な行動化を示した.個別心理療法において行動化を示してしまう気持ちを表現する機会が提供され続けたことで,自己制御力が育ち始めた.危機介入や縦軸と横軸の多職種連携が行われたことで,児童養護施設や学校が自己制御力を育むのを助ける場として,より機能するようになった.これらにより行動化は減少した...

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Published in子ども家庭福祉学 Vol. 21; pp. 75 - 86
Main Author 高橋, 裕之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本子ども家庭福祉学会 25.11.2021
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ISSN1347-183X
2758-2280
DOI10.57489/jscfw.21.0_75

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Summary:本論文では,虐待を受けて児童養護施設に入所した思春期の子どもの事例を取り上げた.そのような思春期の子どもへの心理的支援について,自己制御力の課題を中心に考察することが,本論文の目的である.入所後の彼は衝動や欲求をコントロールし,ルールに沿った形で折り合いをつけることができず,万引き・夜間徘徊・破壊行為といった様々な行動化を示した.個別心理療法において行動化を示してしまう気持ちを表現する機会が提供され続けたことで,自己制御力が育ち始めた.危機介入や縦軸と横軸の多職種連携が行われたことで,児童養護施設や学校が自己制御力を育むのを助ける場として,より機能するようになった.これらにより行動化は減少した.彼は思春期の発達課題にも直面し,著者は個別心理療法で支援した.彼への支援の経過を振り返り,個別心理療法・危機介入・多職種連携といった多様な支援を行うことの重要性について論じた.
ISSN:1347-183X
2758-2280
DOI:10.57489/jscfw.21.0_75