ステントグラフト内挿術後に三期的食道再建術を行った大動脈食道瘻の1例

症例は57歳,女性.急性B型大動脈解離術後11カ月の時点で,吐血を主訴に当院へ搬送された. CT が施行されたところ人工血管吻合部中枢側に動脈瘤を認め,大動脈食道瘻(aortoesophageal fistula: AEF)の診断となった.出血性ショックであったが,緊急ステントグラフト内挿術(thoracic endovascular aortic repair: TEVAR)が施行され循環動態は安定した.その後,炎症が軽快した後に根治目的に三期的に食道切除・頸部食道瘻胃瘻造設術,大動脈弓部置換術,食道再建術を施行し,経口摂取可能となり自宅退院した.AEFは,大動脈-食道間の瘻孔形成による出血...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 83; no. 2; pp. 314 - 319
Main Authors 仲野, 宏, 花山, 寛之, 佐瀬, 善一郎, 河野, 浩二
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2022
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Summary:症例は57歳,女性.急性B型大動脈解離術後11カ月の時点で,吐血を主訴に当院へ搬送された. CT が施行されたところ人工血管吻合部中枢側に動脈瘤を認め,大動脈食道瘻(aortoesophageal fistula: AEF)の診断となった.出血性ショックであったが,緊急ステントグラフト内挿術(thoracic endovascular aortic repair: TEVAR)が施行され循環動態は安定した.その後,炎症が軽快した後に根治目的に三期的に食道切除・頸部食道瘻胃瘻造設術,大動脈弓部置換術,食道再建術を施行し,経口摂取可能となり自宅退院した.AEFは,大動脈-食道間の瘻孔形成による出血に加え,大動脈壁の感染が主病態で死亡率が高い疾患である.その根治的治療は,感染源である食道抜去,感染動脈組織除去と人工血管での血行再建となるが,手術を行ったとしても術後死亡率3.1%,院内死亡率18.8%との報告もあり,未だ救命率は高くない疾患である.今回われわれは,AEFに対しTEVARによる循環動態の安定化の後に,再建術を三期的手術として手術侵襲を分散することで,救命,根治しえた症例を経験したので,その有用性を文献的考察も踏まえ報告する.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.83.314