線維筋痛症モデル動物を用いた痛覚変調性疼痛治療アプローチ探索研究
目的:痛覚変調性疼痛は,明確な器質的変化が認められないにもかかわらず口腔顔面領域を含む身体に生じる疼痛であり,充分に効果の高い治療法はない.病態生理学的機序および治療アプローチを,病態モデル動物における研究成果から抄出する. 研究の選択:線維筋痛症は,痛覚変調性疼痛を主徴とする代表的疾患である.“線維筋痛症は,脳内モノアミンによる調節機構破綻をトリガーとして発症する”との仮説に立脚して作成されたレセルピン誘発筋痛(reserpine-induced myalgia:RIM)モデル動物(ラット等)における知見を基に考察する. 結果:RIMモデル動物において,患者と類似する非器質性の痛覚変調性疼痛...
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Published in | Japanese Journal of Orofacial Pain Vol. 17; no. 1; pp. 9 - 16 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本口腔顔面痛学会
2025
Japanese Society of Orofacial Pain |
Subjects | |
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ISSN | 1883-308X 1882-9333 |
DOI | 10.11264/jjop.17.9 |
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Summary: | 目的:痛覚変調性疼痛は,明確な器質的変化が認められないにもかかわらず口腔顔面領域を含む身体に生じる疼痛であり,充分に効果の高い治療法はない.病態生理学的機序および治療アプローチを,病態モデル動物における研究成果から抄出する. 研究の選択:線維筋痛症は,痛覚変調性疼痛を主徴とする代表的疾患である.“線維筋痛症は,脳内モノアミンによる調節機構破綻をトリガーとして発症する”との仮説に立脚して作成されたレセルピン誘発筋痛(reserpine-induced myalgia:RIM)モデル動物(ラット等)における知見を基に考察する. 結果:RIMモデル動物において,患者と類似する非器質性の痛覚変調性疼痛様の症状(刺激誘発痛および自発痛)を生じる.脳内モノアミン濃度減少に続いて,酸化ストレス上昇,疼痛伝達促進性神経伝達物質の増加,脳の免疫細胞活性化等の病態生理学的変化が生じる.痛覚変調性疼痛に対する治療アプローチ候補として,1)モノアミンの減少後に発現が変化する分子の機能修飾,2)他慢性疼痛(神経障害性疼痛等)の原因分子の標的化,3)崩れた栄養バランスの栄養補給による修正,4)天然産物による体質改善,5)非薬物的介入が報告される. 結論:RIMモデル動物における知見の患者へのトランスレーションによる,口腔顔面領域を含む痛覚変調性疼痛の機序解明および有効な治療アプローチ開発が期待される. |
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ISSN: | 1883-308X 1882-9333 |
DOI: | 10.11264/jjop.17.9 |