超低出生体重児に生じた原発性皮膚アスペルギルス症の1例

在胎22週6日,326 gで帝王切開にて出生した新生児.新生児集中治療室にて保育器内人工呼吸器管理下にあった.日齢3より右胸部から腹部にかけて水疱を伴う皮疹が出現,右大腿に拡大した.皮膚科初診時,右腋窩,側胸部,腹部から大腿に帯状に分布する紅斑,小水疱がみられた.血液検査でβ-D-グルカン5330 pg/mlと著明に上昇していた.胸部レントゲンで肺アスペルギルス症を疑わせる所見はなかった.真菌学的には,水疱底からの直接鏡検で豊富な菌糸がみられ,サブローデキストロース寒天培地にて緑色調絨毛状のコロニーの発育が確認された.スライドカルチャー所見はAspergillus fumigatusに合致し,...

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Published in日本臨床皮膚科医会雑誌 Vol. 39; no. 3; pp. 406 - 411
Main Authors 岩間, 理沙, 池田, 英里, 梅垣, 知子, 二宮, 淳也, 石崎, 純子, 田中, 勝, 原田, 敬之, 溝上, 雅恵, 平林, 将明, 亀井, 克彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床皮膚科医会 2022
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Summary:在胎22週6日,326 gで帝王切開にて出生した新生児.新生児集中治療室にて保育器内人工呼吸器管理下にあった.日齢3より右胸部から腹部にかけて水疱を伴う皮疹が出現,右大腿に拡大した.皮膚科初診時,右腋窩,側胸部,腹部から大腿に帯状に分布する紅斑,小水疱がみられた.血液検査でβ-D-グルカン5330 pg/mlと著明に上昇していた.胸部レントゲンで肺アスペルギルス症を疑わせる所見はなかった.真菌学的には,水疱底からの直接鏡検で豊富な菌糸がみられ,サブローデキストロース寒天培地にて緑色調絨毛状のコロニーの発育が確認された.スライドカルチャー所見はAspergillus fumigatusに合致し,後日遺伝子配列の解析から同菌と同定した.出生時より予防投与していたトリアゾール系のフルコナゾールを日齢6より治療量に増量し,ミコナゾールゲル外用を開始した.日齢7よりポリエン系のアムホテリシンB (amphotericin B, AMPH-B)に変更したが,水疱拡大と壊死が進行,日齢16に永眠した.後日施行した感受性検査ではキャンディン系抗真菌薬であるミカファンギンに対する感受性が最も良好であった.新生児に生じた原発性皮膚アスペルギルス症は1980年以降,低出生体重児例の報告が散見される.その多くはAMPH-B単剤で治療されているが,本邦の最新のガイドラインではキャンディン系抗真菌薬が第一選択として推奨されている.キャンディン系抗真菌薬は皮膚科医が投与する機会が極めて少なく,また臨床において真菌に対する感受性検査はルーチンには行われていない.自験例ではAMPH-B投与にて症状の改善が得られず,キャンディン系抗真菌薬投与を考慮すべきであったと考えられた.今後さらなる医学の進歩に伴い同様の症例の増加が予測され,治療方針を含めた本疾患の周知および,皮膚科と新生児科の連携が重要である.
ISSN:1349-7758
1882-272X
DOI:10.3812/jocd.39.406