運動に対する充足感が高齢者および高齢者の運動介入効果に与える影響 運動充足感と身体活動量からの検討

目的 運動充足感の違いが高齢者の心身機能に与える影響と,運動を中心とした介入終了後の運動充足感による介入効果の違いを明らかにすることを目的とした。 方法 介入研究に参加した地域在住高齢者260人(平均年齢±標準偏差=70.4±6.0歳)を解析対象とした。事前検査時に主観的な運動充足感と身体活動量(仕事などの生活活動と運動習慣から定義)を聴取し,それぞれを 2 水準(低•高)にまとめ,各運動充足感間における測定変数を多変量分散分析を用いて検討した。また,運動介入群(88人,平均年齢±標準偏差=70.3±6.2歳)の介入終了時の運動充足感を悪化群(介入後においても低運動充足だった者)と維持•改善群...

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Published in日本公衆衛生雑誌 Vol. 59; no. 10; pp. 743 - 754
Main Authors 鈴木, 宏幸, 内田, 勇人, 新開, 省二, 西川, 武志, 桜井, 良太, 金, 美芝, 金, 憲経, 渡辺, 修一郎, 藤原, 佳典, 深谷, 太郎, 野中, 久美子, 田中, 千晶, 齋藤, 京子, 安永, 正史
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本公衆衛生学会 2012
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ISSN0546-1766
2187-8986
DOI10.11236/jph.59.10_743

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Summary:目的 運動充足感の違いが高齢者の心身機能に与える影響と,運動を中心とした介入終了後の運動充足感による介入効果の違いを明らかにすることを目的とした。 方法 介入研究に参加した地域在住高齢者260人(平均年齢±標準偏差=70.4±6.0歳)を解析対象とした。事前検査時に主観的な運動充足感と身体活動量(仕事などの生活活動と運動習慣から定義)を聴取し,それぞれを 2 水準(低•高)にまとめ,各運動充足感間における測定変数を多変量分散分析を用いて検討した。また,運動介入群(88人,平均年齢±標準偏差=70.3±6.2歳)の介入終了時の運動充足感を悪化群(介入後においても低運動充足だった者)と維持•改善群(介入後に高運動充足感だった者)に分け,これらの群を独立変数とした反復測定分散分析を行った。なお,介入は週 2 回,3 か月間の複合プログラム(運動•栄養教室,温泉入浴)を実施し,事後調査を行った。事前•事後検査時には精神的健康状態(WHO–5 得点),健康関連 QOL(SF–8),精神的自立性を質問紙によって聴取し,運動機能の検査(握力,歩行速度,開眼片足立ち,Timed Up & Go test)を行った。 結果 運動充足感を独立変数とし,身体活動量を共変量とした多変量分散分析の結果,BMI,握力,最大歩行速度,WHO–5 得点,SF–8 下位 8 項目に有意な差が認められ,すべての項目において,高充足群は低充足群に比べ,値が良好である傾向が示された。また,各身体活動量群内での比較においても同様の傾向が認められた。介入終了時の運動充足感を独立変数とした反復測定分散分析の結果,通常•最大歩行速度,TUG,SF–8 下位 1 項目に有意な期間の主効果が認められ,BMI,WHO–5 得点,SF–8 下位 6 項目,精神的自立性尺度に有意な群の主効果が認められた。 結論 本研究から,身体活動量にかかわらず,主観的な運動充足感が高い高齢者ほど精神•心理的健康度が高いことが明らかとなった。また,運動を中心とした介入後に運動充足感が低い者においても,身体機能に対する一定の改善が認められたが,介入終了後に高運動充足感を有している者との間には,精神•心理的健康度に有意な差があることが示された。以上の結果は,運動充足感を得られる運動が高齢者の健康増進に寄与する可能性を示唆するとともに,健康教室などにおいて,運動充足感の向上に主眼を置いた,個々の能力•目的に応じた介入内容や,運動充足感の評価が有効であると推察される。
ISSN:0546-1766
2187-8986
DOI:10.11236/jph.59.10_743