ヒト精子の鞭毛運動とATP産生評価による酵素阻害の影響

ヒト精子の鞭毛運動はモータータンパク質ダイニンのすべり運動が駆動力となる。アデノシン3リン酸(ATP)の加水分解によって発生するエネルギーによってこのすべり運動が起こるために、精子内でのATPの産生と供給が必要である。精子内のATPはミトコンドリア内電子伝達系のATP合成酵素や解糖系酵素によって産生される。精子内のATP産生に関係する酵素活性が鞭毛運動に及ぼす影響に興味がある。本発表では、ミトコンドリアや解糖系酵素を阻害したヒト精子について、試験紙を用いたATP由来の発光検出と精子鞭毛運動の高速度カメラ観察の双方から、ATP産生酵素活性と精子運動性との関係を議論する。ATP由来の発光検出につい...

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Published inTransactions of Japanese Society for Medical and Biological Engineering Vol. Annual60; no. Abstract; p. 243_1
Main Authors 形岡, 聖亞, 岸本, 和也, 松浦, 宏治
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本生体医工学会 2022
Japanese Society for Medical and Biological Engineering
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ISSN1347-443X
1881-4379
DOI10.11239/jsmbe.Annual60.243_1

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Summary:ヒト精子の鞭毛運動はモータータンパク質ダイニンのすべり運動が駆動力となる。アデノシン3リン酸(ATP)の加水分解によって発生するエネルギーによってこのすべり運動が起こるために、精子内でのATPの産生と供給が必要である。精子内のATPはミトコンドリア内電子伝達系のATP合成酵素や解糖系酵素によって産生される。精子内のATP産生に関係する酵素活性が鞭毛運動に及ぼす影響に興味がある。本発表では、ミトコンドリアや解糖系酵素を阻害したヒト精子について、試験紙を用いたATP由来の発光検出と精子鞭毛運動の高速度カメラ観察の双方から、ATP産生酵素活性と精子運動性との関係を議論する。ATP由来の発光検出については、ルシフェリンとルシフェラーゼを含む試薬と精液を混合して、ワックスでパターン化された試験紙上にその混合液を滴下することにより発光検出を行った。高速度カメラ観察では、精子の明視野顕微鏡像を取得し、その画像解析によって鞭毛振幅や頭部速度などを評価した。ミトコンドリアや解糖系で産生される酵素を阻害した場合には、鞭毛振幅の低下とATP由来の発光強度の低下が観察された。現時点ではヒト精子において解糖系とミトコンドリアで産生されるATPの双方がヒト精子の鞭毛運動に用いられていると考えている。精子のミトコンドリアは頸部に集中していることから、鞭毛の頸部と尾部の運動を切り分けることによって、どちらの代謝系の寄与が大きいか判別できる。
ISSN:1347-443X
1881-4379
DOI:10.11239/jsmbe.Annual60.243_1