変形する膵管内の細菌の移動現象のメカニズム理解
がん化リスクの高い膵嚢胞には、より大量の細菌が生息している。しかし、どのように細菌が十二指腸から膵臓へと侵入しているか明らかでない。細菌の侵入経路である膵管は、オッディ括約筋の周期的な弛緩と収縮の繰り返しにより流れが調節されている。しかし、オッディ筋、膵管、及び流れがどのように相互作用しているのか不明瞭である。そこで、オッディ筋の圧力変化に伴い変形する膵管内の細菌の侵入現象の数理モデリング解析を行うことを目的とした。モデルは、膵管の構造力学、流れ、および細菌の輸送からなる。COMSOLを用いて有限要素法により膵管形状の変位・流速の数値解を得た。これらの結果を用いて細菌の輸送のシミュレーション解...
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Published in | Transactions of Japanese Society for Medical and Biological Engineering Vol. Annual61; no. Abstract; p. 240_1 |
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Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益社団法人 日本生体医工学会
2023
Japanese Society for Medical and Biological Engineering |
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ISSN | 1347-443X 1881-4379 |
DOI | 10.11239/jsmbe.Annual61.240_1 |
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Summary: | がん化リスクの高い膵嚢胞には、より大量の細菌が生息している。しかし、どのように細菌が十二指腸から膵臓へと侵入しているか明らかでない。細菌の侵入経路である膵管は、オッディ括約筋の周期的な弛緩と収縮の繰り返しにより流れが調節されている。しかし、オッディ筋、膵管、及び流れがどのように相互作用しているのか不明瞭である。そこで、オッディ筋の圧力変化に伴い変形する膵管内の細菌の侵入現象の数理モデリング解析を行うことを目的とした。モデルは、膵管の構造力学、流れ、および細菌の輸送からなる。COMSOLを用いて有限要素法により膵管形状の変位・流速の数値解を得た。これらの結果を用いて細菌の輸送のシミュレーション解析を行った。筋弛緩時の膵管形状は、文献と近く、オッディ筋のある十二指腸壁で窄み、乳頭・膵臓内で広がった。次に、筋肉の周期的な弛緩・収縮を含めた場合について、胆汁の流れのシミュレーション結果を文献と比較した。胆汁が膵臓から十二指腸へ速やかに排出された後、膵臓方向へ一時的に逆流が見られた。これは、収縮していたオッディ筋が弛緩する際に、窄んでいた膵管が広がり、内部の体積の増加分が十二指腸から流入したためである。十二指腸内の細菌は、この逆流によって十二指腸から7 mm程度内部まで侵入した。また、胆石患者に見られるオッディ筋の十二指腸側からの逆行性収縮では、順行性収縮に比べて2 mmより内部へと侵入した。 |
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ISSN: | 1347-443X 1881-4379 |
DOI: | 10.11239/jsmbe.Annual61.240_1 |