重症脳外傷患者における広汎性脱分極のマルチモダリティプローブによる検出

広汎性脱分極(Spreading Depolarization:SD)は神経細胞のイオン勾配の破綻により発生する神経細胞の大規模な脱分極の波であり、神経損傷の進行に重大な役割を果たすと考えられている。しかしながら、SDの検出と診断は複雑であり、現行の方法では限界がある。本研究では、重症脳外傷患者に対する術後管理において、マルチモダリティプローブを使用してECoG(皮質脳波)、皮質温度、脳血液動態を計測し、これらの指標を用いてSDの検出の可能性を検討する。重症脳外傷患者にマルチモダリティプローブを留置し、ECoG、皮質温度、脳血液動態の変化を計測した。計測された脳活動データからSDの疑いのある箇...

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Published inTransactions of Japanese Society for Medical and Biological Engineering Vol. Annual62; no. Abstract; p. 303_2
Main Authors 岡, 史朗, 野村, 貞宏, 山川, 俊貴, 庭山, 雅嗣, 河野, 友香, 井上, 貴雄, 野口, 碧生, 鈴木, 倫保, 杉本, 至健
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本生体医工学会 2024
Japanese Society for Medical and Biological Engineering
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ISSN1347-443X
1881-4379
DOI10.11239/jsmbe.Annual62.303_2

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Summary:広汎性脱分極(Spreading Depolarization:SD)は神経細胞のイオン勾配の破綻により発生する神経細胞の大規模な脱分極の波であり、神経損傷の進行に重大な役割を果たすと考えられている。しかしながら、SDの検出と診断は複雑であり、現行の方法では限界がある。本研究では、重症脳外傷患者に対する術後管理において、マルチモダリティプローブを使用してECoG(皮質脳波)、皮質温度、脳血液動態を計測し、これらの指標を用いてSDの検出の可能性を検討する。重症脳外傷患者にマルチモダリティプローブを留置し、ECoG、皮質温度、脳血液動態の変化を計測した。計測された脳活動データからSDの疑いのある箇所を抽出し、それらの区間で皮質温度や血液動態が同時に変化するかを分析した。SDを構成するDC脳波変動(DC shift)の抽出には、0.0025Hzのハイパスフィルタを用いた。ECoGにおいては、188箇所のSDの疑いがあるDC shfitを確認した。さらに、88箇所でDC shiftと共に、脳温または脳血流動態の同時変化が観察された。マルチモダリティプローブの使用により、脳波だけでは判断が難しい症例においても、脳温や血液動態の同時計測がSDのより正確な診断に寄与する可能性が示唆された。また、本研究の結果をもとに、SDを少ないチャンネル数で効果的に検出する方法を考案したので併せて報告する。
ISSN:1347-443X
1881-4379
DOI:10.11239/jsmbe.Annual62.303_2