自閉スペクトラム児におけるプロソディ表出面についての評価
音声を介したやりとりにおいて,声の高さ,速さ,大きさといったプロソディの要素は,意思伝達に不可欠な,様々な機能を果たしている。本研究では,社会的コミュニケーションの困難を特徴のひとつとする自閉スペクトラム症(ASD)の子どもが,日常場面においてプロソディを運用するにあたり,どのような面で特徴を見せるのか広く調査することを目的とした。方法として,学齢期のASDおよび定型発達の児童の親を対象に,子のプロソディ表出について問う質問紙を実施した。因子分析の結果,4つの因子が抽出され,最終的に23の質問項目が,声の自然さ,他者への配慮,声まね,発話態度の領域にまとめられた。分散分析の結果,全ての領域にお...
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Published in | 発達心理学研究 Vol. 30; no. 4; pp. 329 - 340 |
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Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本発達心理学会
2019
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Subjects | |
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ISSN | 0915-9029 2187-9346 |
DOI | 10.11201/jjdp.30.329 |
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Summary: | 音声を介したやりとりにおいて,声の高さ,速さ,大きさといったプロソディの要素は,意思伝達に不可欠な,様々な機能を果たしている。本研究では,社会的コミュニケーションの困難を特徴のひとつとする自閉スペクトラム症(ASD)の子どもが,日常場面においてプロソディを運用するにあたり,どのような面で特徴を見せるのか広く調査することを目的とした。方法として,学齢期のASDおよび定型発達の児童の親を対象に,子のプロソディ表出について問う質問紙を実施した。因子分析の結果,4つの因子が抽出され,最終的に23の質問項目が,声の自然さ,他者への配慮,声まね,発話態度の領域にまとめられた。分散分析の結果,全ての領域において群間の有意差が認められ,判別分析においては高い的中率を示した。また,児童の基本データとして取得した発達プロフィールのうち,特に自閉性やコミュニケーションに関する評定が,プロソディスキルとの相関が高いことが示された。日本国内において,ASD児に特異的な表出性プロソディの側面を,包括的にカバーした検査や支援ツールはまだ開発されていない。本尺度が,子どもの領域別の発達を評価し,より詳細な検査や支援へとつなげていくための,初期的アセスメントとしての機能を果たすことが期待される。 |
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ISSN: | 0915-9029 2187-9346 |
DOI: | 10.11201/jjdp.30.329 |