トマト子房の培養

2,4-D5ppm散布により単為結果的に発育を誘致したトマトの子房を, 植物体から切り取り, 殺菌後, NITSCHの基本培養液に種々の植物のしぼり汁や化学物質を添加した培養基に植え付け, 子房の発育におよぼす添加物, 光, 温度および花齢の影響をみた。暗黒処理と高温処理を除き, 培養は20°C, 自然日長の室でおこなつた。培養後80日または85日に収穫して, 果重, 発根, 着色その他について調査した。 1. 添加物のうち, リンゴのしぼり汁は, トマトのしぼり汁と同程度に子房の発育に効果があつた。 2. 子房は暗黒下でもよく発育し, 果重は明所のものと同程度であつた。しかし, 明所で培養し...

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Published in園芸学会雑誌 Vol. 31; no. 3; pp. 198 - 206
Main Author 狩野, 邦雄
Format Journal Article
LanguageEnglish
Published 一般社団法人 園芸学会 1962
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Summary:2,4-D5ppm散布により単為結果的に発育を誘致したトマトの子房を, 植物体から切り取り, 殺菌後, NITSCHの基本培養液に種々の植物のしぼり汁や化学物質を添加した培養基に植え付け, 子房の発育におよぼす添加物, 光, 温度および花齢の影響をみた。暗黒処理と高温処理を除き, 培養は20°C, 自然日長の室でおこなつた。培養後80日または85日に収穫して, 果重, 発根, 着色その他について調査した。 1. 添加物のうち, リンゴのしぼり汁は, トマトのしぼり汁と同程度に子房の発育に効果があつた。 2. 子房は暗黒下でもよく発育し, 果重は明所のものと同程度であつた。しかし, 明所で培養したものにくらべ, 発根率は高いが着色率は橙低い。赤色種の暗黒下での着色は桃色であつた。 3. 2,4-D 0.1ppmを含む培養基に植えた未受粉の子房は, ほとんど発育しなかつたが基部にはカルスを形成した。 4. 花齢は子房の発育に本質的には影響がない。 5. 30°C暗黒で培養した子房は, 20°C暗黒で培養した子房より果重が大であつた。また30°C暗黒では, 根量やカルスの形成が多かつた。 6. 培養で大きくなつた果実は概して奇形で, 場合により, 子房の発育しないものでがく片が異常に肥大し, 着色するのがみられた。果実の膨大部では, 果皮, ゼラチン状胎座組織および胚珠も非膨大部にくらべよく発達していた。
ISSN:0013-7626
1880-358X
DOI:10.2503/jjshs.31.198