マウスレニンの種特異的な反応性が, ヒトアンギオテンシノーゲンを過剰発現するトランスジェニックマウスでの正常血圧維持の一因となっている

最も強力な血圧上昇物質の一つであるアンギオテンシンIIの前駆体・アンギオテンシノーゲンの酵素レニンによる切断は, 血圧や電解質のバランス維持に関与するレニン・アンギオテンシン系において重要な反応過程である. 本研究では, 以前我々が作製したヒトアンギオテンシノーゲンを過剰発現するトランスジェニックマウスにおいて, その生理的な影響を調べるため血圧と心拍を測定した. その結果, トランスジェニックマウスとコントロールマウスの血圧および心拍数には, 有意な差は見られなかった. そこで, マウスレニンのアンギオテンシノーゲンに対する反応性をin vitroのアッセイ系で検討した. その結果, ブタ血...

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Published inJournal of Veterinary Medical Science Vol. 54; no. 6; pp. 1191 - 1193
Main Authors 高橋, 滋, 深水, 昭吉, 波多江, 利久, 山田, 裕二, 杉山, 文博, 梶原, 典子, 八神, 健一, 村上, 和雄
Format Journal Article
LanguageEnglish
Published 公益社団法人 日本獣医学会 1992
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Summary:最も強力な血圧上昇物質の一つであるアンギオテンシンIIの前駆体・アンギオテンシノーゲンの酵素レニンによる切断は, 血圧や電解質のバランス維持に関与するレニン・アンギオテンシン系において重要な反応過程である. 本研究では, 以前我々が作製したヒトアンギオテンシノーゲンを過剰発現するトランスジェニックマウスにおいて, その生理的な影響を調べるため血圧と心拍を測定した. その結果, トランスジェニックマウスとコントロールマウスの血圧および心拍数には, 有意な差は見られなかった. そこで, マウスレニンのアンギオテンシノーゲンに対する反応性をin vitroのアッセイ系で検討した. その結果, ブタ血液から精製したアンギオテンシノーゲンには, ヒトレニンとマウスレニンは反応性を示した. しかし, ヒトアンギオテンシノーゲンに対してヒトレニンは反応するが, マウスレニンは反応性を示さなかった. 以上のことより, トランスジェニックマウスにおいてヒトアンギオテンシノーゲンの過剰発現にもかかわらず血圧が正常に維持されるのは, マウスレニンのヒト基質に対する種特異的な反応性によることが示唆された.
ISSN:0916-7250
1347-7439
DOI:10.1292/jvms.54.1191