フルニエ壊疽の一例
フルニエ壊疽は生殖器,会陰部,肛門周囲を中心として急速に進行する壊死性筋膜炎と定義されており,死亡率が高い疾患であるため,迅速な重症度評価を行い,適切な治療をできるだけ早期に開始することが重要である.今回,UFGSやSFGSIといった指標が低値であり,適切な治療を行ったことで重症化しなかったフルニエ壊疽の一例を経験したため,考察を加えて報告する. 症例は高血圧以外の既往がない59歳の男性.8日前から臀部痛があり,近医にて抗菌薬の内服治療が開始されたが改善なく,歩行困難となったため当科受診された.当科受診時,右陰嚢,左臀部に紅斑を認め,右陰嚢部に波動および握雪感を触れた.陰茎の腫脹,睾丸把握痛は...
Saved in:
Published in | 日本臨床皮膚科医会雑誌 Vol. 42; no. 1; pp. 48 - 52 |
---|---|
Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本臨床皮膚科医会
2025
|
Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 1349-7758 1882-272X |
DOI | 10.3812/jocd.42.48 |
Cover
Summary: | フルニエ壊疽は生殖器,会陰部,肛門周囲を中心として急速に進行する壊死性筋膜炎と定義されており,死亡率が高い疾患であるため,迅速な重症度評価を行い,適切な治療をできるだけ早期に開始することが重要である.今回,UFGSやSFGSIといった指標が低値であり,適切な治療を行ったことで重症化しなかったフルニエ壊疽の一例を経験したため,考察を加えて報告する. 症例は高血圧以外の既往がない59歳の男性.8日前から臀部痛があり,近医にて抗菌薬の内服治療が開始されたが改善なく,歩行困難となったため当科受診された.当科受診時,右陰嚢,左臀部に紅斑を認め,右陰嚢部に波動および握雪感を触れた.陰茎の腫脹,睾丸把握痛は認めなかった.造影CT検査にて陰茎腹側から会陰部周囲に境界明瞭なガス像および液体貯留を,左会陰部から左臀部に脂肪組織濃度の上昇を認め,フルニエ壊疽と診断した.陰嚢,陰茎,睾丸周囲は辺縁が保たれていた.直腸周囲に腫瘤性病変は指摘できなかった. LRINECスコア(Laboratory risk indicator for necrotizing fasciitis score)8点と壊死性筋膜炎が考慮されたが,UFGSIは7点,SFGSIは0点と低リスクの評価であった.血液培養検査は陰性であったが,壊死組織の培養からはStreptococcus constellatus ssp pharynge,Prevotella biviaが検出された.同日,切開ドレナージおよびデブリードマンを施行し,抗菌薬投与を行い,患部と全身状態は速やかに改善した. フルニエ壊疽のリスク評価には,FGSIやUFGSIが有用である.それらのスコアは計算が煩雑であるため,簡略化されたSFGSIも考案されており,有用な指標であるとの報告もされている.フルニエ壊疽は早期の診断と処置が大変重要であるが,UFGSI,SFGSIといった重症化を予測する指標は参考になると考えた. |
---|---|
ISSN: | 1349-7758 1882-272X |
DOI: | 10.3812/jocd.42.48 |