fNIRSによる脳損傷サルの運動関連領野モニタリング

脳損傷回復過程のおける神経回路の変容をモニタリングすることは、リハビリテーションの方法論の確立のために重要である。装置のウェアラブル化が可能なfNIRSはこの用途に適している。我々は、ヒトに近い遺伝学的・解剖学的特徴をもつ霊長類であるマカクザルに対して運動麻痺を残す脳卒中を模して内包後脚損傷を誘導し、その回復前後での手指運動時の運動関連領野の機能性脳血流変化の計測可否を検討した。サル頭蓋骨表面にプローブ着脱用ソケットを造設し、7.5mm間隔で27チャンネルを配置して両半球の運動関連領野を130ms毎で計測した。計測実験では、サルは約20秒おきにエサを左右交互に片手で食餌し、各実験で左右それぞれ...

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Published in生体医工学 Vol. Annual56; no. Abstract; p. S184
Main Authors 山田, 亨, 川口, 拓之, 加藤, 準平, 松田, 圭司, 肥後, 範行
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本生体医工学会 2018
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Summary:脳損傷回復過程のおける神経回路の変容をモニタリングすることは、リハビリテーションの方法論の確立のために重要である。装置のウェアラブル化が可能なfNIRSはこの用途に適している。我々は、ヒトに近い遺伝学的・解剖学的特徴をもつ霊長類であるマカクザルに対して運動麻痺を残す脳卒中を模して内包後脚損傷を誘導し、その回復前後での手指運動時の運動関連領野の機能性脳血流変化の計測可否を検討した。サル頭蓋骨表面にプローブ着脱用ソケットを造設し、7.5mm間隔で27チャンネルを配置して両半球の運動関連領野を130ms毎で計測した。計測実験では、サルは約20秒おきにエサを左右交互に片手で食餌し、各実験で左右それぞれ75回繰り返した。エサ皿の前のレーザーセンサーによりエサ取り時刻と所要時間を同時に記録した。エサ取り動作に伴い、多くのチャンネルでオキシヘモグロビン増大とデオキシヘモグロビン減少が見られ、振幅・時間波形の違いから機能領野が弁別できた。特に左右手指で振幅が有意に異なった部位は解剖学上のHand knobによく一致した。脳損傷回復後の結果では、これに加えて、損傷側のみで対側手使用時に運動前野の賦活が見られ、こM1損傷回復での神経再構築の知見(Murata, 2015)との整合性が示された。以上は覚醒・無拘束のサルの運動関連領野の賦活変容のモニタリングへのシステムの有効性を示すものである。
ISSN:1347-443X
1881-4379
DOI:10.11239/jsmbe.Annual56.S184