腹腔鏡手術で用いた有棘連続縫合糸による小腸損傷の1例
症例は69歳,男性.幽門側胃切術後のBraun吻合部に生じた小腸重積に対し,腹腔鏡手術を施行した.術中自然整復されていたが,再発予防に有棘連続縫合糸(V-LocTM)を用いて輸入脚と輸出脚の小腸同士を漿膜筋層連続縫合にて固定した.術後20日目に腹痛で受診され,CTで回腸末端近傍にfree airと膿瘍形成を認めた.小腸穿孔・腹腔内膿瘍の診断で緊急手術を施行した.小腸漿膜が裂けて露出した有棘連続縫合糸の先端が腸間膜に癒着し,形成された間隙に回腸末端が嵌入し,糸によって腸管が締め付けられ,機械的刺激により小腸損傷をきたしたと診断した.露出した糸を切離して裂けた吻合部小腸漿膜を修復し,穿孔部に対して...
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Published in | 日本臨床外科学会雑誌 Vol. 85; no. 1; pp. 53 - 58 |
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Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本臨床外科学会
2024
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Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 1345-2843 1882-5133 |
DOI | 10.3919/jjsa.85.53 |
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Summary: | 症例は69歳,男性.幽門側胃切術後のBraun吻合部に生じた小腸重積に対し,腹腔鏡手術を施行した.術中自然整復されていたが,再発予防に有棘連続縫合糸(V-LocTM)を用いて輸入脚と輸出脚の小腸同士を漿膜筋層連続縫合にて固定した.術後20日目に腹痛で受診され,CTで回腸末端近傍にfree airと膿瘍形成を認めた.小腸穿孔・腹腔内膿瘍の診断で緊急手術を施行した.小腸漿膜が裂けて露出した有棘連続縫合糸の先端が腸間膜に癒着し,形成された間隙に回腸末端が嵌入し,糸によって腸管が締め付けられ,機械的刺激により小腸損傷をきたしたと診断した.露出した糸を切離して裂けた吻合部小腸漿膜を修復し,穿孔部に対しては回盲部切除を施行した.再手術後経過は良好であった.腹腔鏡手術において有棘連続縫合糸は結紮の必要がなく有用なデバイスであるが,合併症をきたす可能性があることに留意する必要がある. |
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ISSN: | 1345-2843 1882-5133 |
DOI: | 10.3919/jjsa.85.53 |