乳糜胸を併発した収縮性心膜炎の猫の1例

7歳齢の雄猫(スコティッシュ・フォールド)が,他院にて乳糜胸水の貯留と心筋症を指摘され,当院に来院した。身体検査にて腹部から下腿にかけて重度の浮腫が認められ,心エコー図検査にて心膜の肥厚,左室内腔の狭小化および弛緩異常が認められた。左心房の拡大は認められなかった。これらの所見から心膜のコンプライアンス低下によるによる拡張不全をきたした右心不全を疑い,開胸下で心膜切除を行った。術中所見として,心膜の硬化および臓側心膜と壁側心膜の癒着が複数箇所認められた。切除した心膜は線維性結合組織の増生を伴った反応性肉芽組織を形成していた。これらを踏まえ,本例は収縮性心膜炎を起こしていたものと考えられた。外科的...

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Published in動物の循環器 Vol. 56; no. 1; pp. 31 - 36
Main Authors 高尾, 紘一郎, 高尾, 知美, 町田, 登
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本獣医循環器学会 2023
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Summary:7歳齢の雄猫(スコティッシュ・フォールド)が,他院にて乳糜胸水の貯留と心筋症を指摘され,当院に来院した。身体検査にて腹部から下腿にかけて重度の浮腫が認められ,心エコー図検査にて心膜の肥厚,左室内腔の狭小化および弛緩異常が認められた。左心房の拡大は認められなかった。これらの所見から心膜のコンプライアンス低下によるによる拡張不全をきたした右心不全を疑い,開胸下で心膜切除を行った。術中所見として,心膜の硬化および臓側心膜と壁側心膜の癒着が複数箇所認められた。切除した心膜は線維性結合組織の増生を伴った反応性肉芽組織を形成していた。これらを踏まえ,本例は収縮性心膜炎を起こしていたものと考えられた。外科的な心膜切除後は経過良好であったが,乳糜胸水の貯留は治まらず,第44病日に死亡した。キーワード:
ISSN:0910-6537
1883-5260
DOI:10.11276/jsvc.56.31