MRSA, 最新のトピックス

黄色ブドウ球菌は抗菌薬が開発される度に次々に耐性を獲得し, 院内感染の最大の原因であるMRSAを生み出した. バンコマイシン (VCM) はMRSA感染症の切り札として20年以上臨症分野で使用されてきたが, 1997年に世界で初めてVCM軽度耐性黄色ブドウ球菌 (L-VRSA) が確認された. L-VRSAはVCMのMICが8μ9/ml以上の黄色ブドウ球菌と定義され, 世界でこれまでに数十株が報告されている.この耐性度は臨床的にVCMによる治療を失敗させるに十分なレベルであるが, 2002年には米国でさらに高い耐性度を持った高度耐性黄色ブドウ球菌 (VRSA) が分離された. このVRSAは同...

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Published in順天堂医学 Vol. 50; no. 1; pp. 48 - 59
Main Authors 有高, 奈々絵, 堀, 賢
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 順天堂医学会 2004
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Summary:黄色ブドウ球菌は抗菌薬が開発される度に次々に耐性を獲得し, 院内感染の最大の原因であるMRSAを生み出した. バンコマイシン (VCM) はMRSA感染症の切り札として20年以上臨症分野で使用されてきたが, 1997年に世界で初めてVCM軽度耐性黄色ブドウ球菌 (L-VRSA) が確認された. L-VRSAはVCMのMICが8μ9/ml以上の黄色ブドウ球菌と定義され, 世界でこれまでに数十株が報告されている.この耐性度は臨床的にVCMによる治療を失敗させるに十分なレベルであるが, 2002年には米国でさらに高い耐性度を持った高度耐性黄色ブドウ球菌 (VRSA) が分離された. このVRSAは同一部位より検出されたVCM耐性腸球菌から, VCM耐性遺伝子を獲得した可能性が示唆されている.一方1990年代以降, 欧米やオーストラリアでMRSAの市中獲得感染 (C-MRSA) の報告が増加しつつある. C-MRSAは院内感染の原因となる従来のMRSAとは異なり, β-lactam薬以外の多くの抗菌薬に感受性を示すが, その一方で強力な毒素を産生し致死率の高いクローンも存在する.このように常に進化し続けるMRSAに対して, 2001年以降VRSAやC-MRSAを含めた複数のMRSAの全ゲノムが解読され, その比較からVCM耐性メカニズムやC-MRSA特有の病原性の解明が徐々に進んできた.現在推奨されるMRSA感染症の治療としてはVCM単独投与以外に, リファンピシンやST合剤との併用, テイコプラニン+β-lactam薬, スルバクタム/アンピシリン十アルベカシンなどの併用療法が推奨されている. また従来以上に有効かつ経済効率に優れた院内感染防止対策や, 病院全体としての抗菌薬適正使用のための取り組みが, 近年日本でも模索されつつある.
ISSN:0022-6769
2188-2134
DOI:10.14789/pjmj.50.48