尿を材料とした風疹ウイルス抗体測定とその疫学的有用性

目的 尿を材料とした風疹 IgG 抗体測定の疫学的有用性を検討するために,1)風疹自然感染および風疹予防接種後の抗体出現を明らかにするとともに,2)保健センターの 3 歳児健康診査受診者を対象にした疫学調査を実施した。 方法 風疹自然感染例調査は,7 医療機関(小児科)の協力で,風疹感染が疑われた12例について,感染急性期(1-6 病日)と回復期(2-6 週間後)の尿と血清を採取した。風疹予防接種例調査は,風疹抗体陰性者17例(19歳-23歳)から風疹予防接種時,3 週後,6~7 週後,1 年後(5 例)に尿と血清を採取した。なお,上記の研究協力者の検体採取については,すべて本人または保護者に...

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Published in日本公衆衛生雑誌 Vol. 49; no. 12; pp. 1227 - 1238
Main Authors 大屋, 日登美, 市川, 誠一, 横田, 俊平, 木村, 博和, 中沢, 明紀, 植地, 正文, 柴田, 茂男
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本公衆衛生学会 2002
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Summary:目的 尿を材料とした風疹 IgG 抗体測定の疫学的有用性を検討するために,1)風疹自然感染および風疹予防接種後の抗体出現を明らかにするとともに,2)保健センターの 3 歳児健康診査受診者を対象にした疫学調査を実施した。 方法 風疹自然感染例調査は,7 医療機関(小児科)の協力で,風疹感染が疑われた12例について,感染急性期(1-6 病日)と回復期(2-6 週間後)の尿と血清を採取した。風疹予防接種例調査は,風疹抗体陰性者17例(19歳-23歳)から風疹予防接種時,3 週後,6~7 週後,1 年後(5 例)に尿と血清を採取した。なお,上記の研究協力者の検体採取については,すべて本人または保護者に説明し同意を得た。  3 歳児健康診査受診者の尿を用いた風疹疫学調査は,小田原市保健センターにおける 3 歳児健康診査受診者(3 歳 6 か月)を対象とし,保護者から本調査の同意を得た幼児740例について,尿中風疹 IgG 抗体測定と予防接種歴等の質問紙調査を実施した。  血清中の風疹抗体は,VIDAS Rubella-IgG および IgM(日本ビオメリュー),および PLATELIA II Rubella-IgG(富士レビオ),尿中の風疹 IgG 抗体は,ELISA 法(大塚製薬)で測定した。集計および統計分析は,SPSS 9.0を用いた。 結果 1) 尿中風疹 IgG 抗体測定法の感度は99.4%,特異度は100%であった。  2) 風疹感染が疑われた12例の内 6 例は,風疹初感染で回復期には血清および尿中の風疹 IgG 抗体が有意に上昇していた。  3) 風疹予防接種の17例は,6 または 7 週後の血清で風疹 IgG 抗体が上昇していた。この全例は尿でも同様に風疹 IgG 抗体の上昇が確認できた  4) 3 歳児健康診査での風疹疫学調査において,尿中の風疹 IgG 抗体保有率は80.9%であった。予防接種歴を母子健康手帳で確認して回答したもの(698例)の内では風疹予防接種率は81.7%で,予防接種を受けていなかった児の尿中の風疹 IgG 抗体保有率は12.5%であった。 結論 風疹の自然感染例や予防接種例の抗体上昇は,尿を材料としても確認することができた。また,幼児を対象とした調査は,健康診査時の尿を用いて容易に行うことができた。これらのことは,風疹抗体の疫学調査において尿が有用であることを示唆している。
ISSN:0546-1766
2187-8986
DOI:10.11236/jph.49.12_1227