停留精巣を合併した嵌頓鼠径ヘルニアの1例

症例は72歳,男性。以前から右鼠径ヘルニアを指摘されていたが自身で整復していた。右鼠径部痛を主訴に当院救急外来を受診した。経過中に来院時の身体所見で圧痛を伴う右鼠径部腫脹を認めた。造影CTでヘルニア内に小腸の脱出を認め,右鼠径ヘルニア嵌頓と診断した。用手整復できたため翌日待機的に手術を行った。手術は全身麻酔下に鼠径切開法で開始した。ヘルニア囊を開放するとヘルニア囊内に精巣を認め,停留精巣と診断した。癌化の可能性があるため泌尿器科医師の指導の下で精巣を摘出し,direct Kugel法によるヘルニア根治術を施行した。切除標本の病理診断では悪性所見を認めなかった。術後経過は良好で手術翌日に退院した...

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Published in日本腹部救急医学会雑誌 Vol. 43; no. 1; pp. 97 - 100
Main Authors 伊達, 俊輔, 岡田, 禎人, 太平, 周作, 鈴木, 和志, 石田, 陽祐
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本腹部救急医学会 31.01.2023
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Summary:症例は72歳,男性。以前から右鼠径ヘルニアを指摘されていたが自身で整復していた。右鼠径部痛を主訴に当院救急外来を受診した。経過中に来院時の身体所見で圧痛を伴う右鼠径部腫脹を認めた。造影CTでヘルニア内に小腸の脱出を認め,右鼠径ヘルニア嵌頓と診断した。用手整復できたため翌日待機的に手術を行った。手術は全身麻酔下に鼠径切開法で開始した。ヘルニア囊を開放するとヘルニア囊内に精巣を認め,停留精巣と診断した。癌化の可能性があるため泌尿器科医師の指導の下で精巣を摘出し,direct Kugel法によるヘルニア根治術を施行した。切除標本の病理診断では悪性所見を認めなかった。術後経過は良好で手術翌日に退院した。停留精巣は若年で診断されることが多く,本症例のように成人で停留精巣と鼠径ヘルニアの合併は非常にまれである。術中に診断した1例を経験したので文献的考察を加えて報告する。
ISSN:1340-2242
1882-4781
DOI:10.11231/jaem.43.97