多義的旋律の聴取における状態遷移確率の計測

我々の実験の目的は,多義的旋律の認識を通じて,旋律の認識過程を研究することである.そのため断続音(C5)と2つの連続音(A4とE5)から作った多義的旋律を提案した.この多義的旋律は,C5-A4---(DOWN)もしくはC5-E5---(UP)という旋律として錯聴される場合がある.本研究では,聴者の状態(聞こえる旋律)の遷移の時系列を実験的に調べた.1つの実験刺激長は62秒で,旋律を誘導する先行刺激としてDOWNもしくはUPを2秒間提示し,続けて60秒間多義的旋律を提示する.被験者には多義的旋律の聴取中,旋律が変わって聴こえたときにその旋律に応じてボタンを押すよう指示した.反応には,Neutra...

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Published in生体医工学 Vol. Annual56; no. Abstract; p. S300
Main Authors 吉野, 雄介, 根本, 幾, 川勝, 真喜, 古川, 優佳
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本生体医工学会 2018
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Summary:我々の実験の目的は,多義的旋律の認識を通じて,旋律の認識過程を研究することである.そのため断続音(C5)と2つの連続音(A4とE5)から作った多義的旋律を提案した.この多義的旋律は,C5-A4---(DOWN)もしくはC5-E5---(UP)という旋律として錯聴される場合がある.本研究では,聴者の状態(聞こえる旋律)の遷移の時系列を実験的に調べた.1つの実験刺激長は62秒で,旋律を誘導する先行刺激としてDOWNもしくはUPを2秒間提示し,続けて60秒間多義的旋律を提示する.被験者には多義的旋律の聴取中,旋律が変わって聴こえたときにその旋律に応じてボタンを押すよう指示した.反応には,Neutral (刺激音を錯聴しないとき)も加えた.これを,先行刺激がDownとUpの刺激について,それらの順がランダムになるように,それぞれ20回ずつ繰り返した.定常遷移モデルを仮定し,実験結果から各遷移確率を推定した.得られた遷移確率の全員の平均値から,各時点で聴こえる旋律の確率を計算すると,実験結果とかなりよく適合した.遷移確率の推定値から,断続音がC5のときDOWNの旋律が,C#5のときUpの旋律が,それぞれ逆の旋律より保持されやすいことがわかった.これは断続音との音程が近い旋律のほうが保持されやすいことを示すと考え,それを検証するために,連続音や断続音の音程関係をさらに変えて実験を行なっている.
ISSN:1347-443X
1881-4379
DOI:10.11239/jsmbe.Annual56.S300