茨城県における地震に対する要援護者への保健所・市町村・訪問看護ステーションの被災予防と避難支援の実態調査

目的 地震時の要援護者の被災予防と避難支援対策について,特に慢性疾患もしくは身体障害を有する成人•高齢者の在宅療養者に焦点をあて,茨城県の保健所,市町村,訪問看護ステーションにおける2008年から2009年の時点での実態を明らかにし,今後の,要援護者個々への地震の備えと避難支援をするための地域ケアシステム構築の一助にすることを目的とする。 方法 茨城県内の,全訪問看護ステーション93か所の管理者,全44市町村および全12保健所の危機管理対策に携わる保健師を対象に,郵送自記式質問紙調査を実施した。質問内容は,要援護者に対する被災予防•避難支援の取り組みの実施状況,被災予防•避難支援の事前対策にお...

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Published in日本公衆衛生雑誌 Vol. 59; no. 5; pp. 339 - 351
Main Authors 富岡, 実穂, 伊藤, 文香, 松田, 智行, 上岡, 裕美子, 木下, 由美子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本公衆衛生学会 2012
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ISSN0546-1766
2187-8986
DOI10.11236/jph.59.5_339

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Summary:目的 地震時の要援護者の被災予防と避難支援対策について,特に慢性疾患もしくは身体障害を有する成人•高齢者の在宅療養者に焦点をあて,茨城県の保健所,市町村,訪問看護ステーションにおける2008年から2009年の時点での実態を明らかにし,今後の,要援護者個々への地震の備えと避難支援をするための地域ケアシステム構築の一助にすることを目的とする。 方法 茨城県内の,全訪問看護ステーション93か所の管理者,全44市町村および全12保健所の危機管理対策に携わる保健師を対象に,郵送自記式質問紙調査を実施した。質問内容は,要援護者に対する被災予防•避難支援の取り組みの実施状況,被災予防•避難支援の事前対策における訪問看護ステーション,市町村,保健所の役割についての認識とした。 結果 調査票の回収数と回収率は,訪問看護ステーションが54件(58.1%),市町村が22件(50.0%),保健所が 8 件(66.7%)であった。訪問看護ステーションと保健所では,マニュアルを「作成した」が22件(40.7%)と 3 件であったが,市町村では「作成した」が 1 件のみであった。個別の避難支援計画(避難支援者,避難場所,避難方法)の作成については,訪問看護ステーションの50件(92.6%),市町村の12件(54.6%)が作成していなかった。要援護者の避難訓練を実施したところは,市町村 5 件(22.7%),保健所 1 件のみで,訪問看護ステーションは実施したところはなかった。被災予防•避難支援の事前対策における訪問看護ステーション,市町村,保健所の役割については,ほとんどの項目で,市町村は「市町村が対応すべき」が過半数を占めたが,保健所は「保健所と市町村が協働して対応すべき」が過半数を占め,訪問看護ステーションも「訪問看護ステーションと市町村•保健所が連携すべき」が過半数を占めた。 結論 茨城県の訪問看護ステーションにおいてはマニュアルの作成はある程度行われているが,要援護者への避難場所•避難方法の指導など要援護者個々への取り組みは乏しいことがわかった。市町村でも個別の避難支援計画作成•避難訓練の実施など要援護者への個別対応は今後の課題であり,これらへの市町村保健師の参画,訪問看護師•ケアマネジャー向けの被災予防教育も重要であると考えられた。医療•介護ニーズの高い要援護者の受け入れ先病院•施設の確保および災害時に必要な看護を継続するために,県•保健所,市町村,複数の訪問看護ステーションが連携して準備することが必要である。
ISSN:0546-1766
2187-8986
DOI:10.11236/jph.59.5_339