炎症病態をターゲットとしたトランスレーショナルリサーチと創薬
High mobility group box-1 (HMGB1) は、核内に局在するクロマチンDNA結合タンパクである。HMGB1はストレス刺激や細胞障害により、細胞質を経由して細胞外へ分泌・放出されると、神経突起伸展活性や起炎性活性を発揮する。このような局在、動態、活性の特徴は、既存の活性物質群とは全く異なっている。演者は、HMGB1に対する特異的単クローン抗体を作製し、抗体を用いて脳虚血、脳出血、脳外傷、てんかん等の中枢疾患におけるターゲットバリデーションと治療効果の評価を行ってきた。その結果、抗体治療は、これらの傷害モデルで共通して観察されるBBB破綻を強く抑制し、随伴する脳内炎症を軽...
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Published in | 日本薬理学会年会要旨集 p. 2-SL8 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益社団法人 日本薬理学会
2021
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ISSN | 2435-4953 |
DOI | 10.1254/jpssuppl.94.0_2-SL8 |
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Summary: | High mobility group box-1 (HMGB1) は、核内に局在するクロマチンDNA結合タンパクである。HMGB1はストレス刺激や細胞障害により、細胞質を経由して細胞外へ分泌・放出されると、神経突起伸展活性や起炎性活性を発揮する。このような局在、動態、活性の特徴は、既存の活性物質群とは全く異なっている。演者は、HMGB1に対する特異的単クローン抗体を作製し、抗体を用いて脳虚血、脳出血、脳外傷、てんかん等の中枢疾患におけるターゲットバリデーションと治療効果の評価を行ってきた。その結果、抗体治療は、これらの傷害モデルで共通して観察されるBBB破綻を強く抑制し、随伴する脳内炎症を軽減することで難治性脳疾患に治療効果を発揮することを明らかにした。HMGB1結合因子として、血漿タンパクHRGを見出し、敗血症病態において血漿HRG低下を起点とする病態形成の機序について新しい考え方と、HRG補充療法を具体的に提案した。HRGの新しい受容体としてCLEC1Aを同定し、HMGB1動員のHRGによる制御を血管内皮細胞で解明した。ターゲット分子同定から開始するトランスレーショナルリサーチと創薬は、薬理学の一つの方向性を示す。 |
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Bibliography: | 94_2-SL8 |
ISSN: | 2435-4953 |
DOI: | 10.1254/jpssuppl.94.0_2-SL8 |