出芽深度の異なるイネおよびヒメタイヌビエの生育に対するカフェンストロールの作用と土壌中における挙動

異なる土壌深度から出芽したイネおよびヒメタイヌビエの生育に対するカフェンストロールの作用と本剤の土壌中における挙動との関係を解析した。 減水条件下の田面水に本剤の水溶液を添加した場合 (土壌表面処理) には, イネでは表層近傍から出芽したものは強い生育阻害を受けたものの, 出芽深度の深いものは阻害されなかった。これに対し, ヒメタテヌビエでは, いずれの深度から出芽しても強く阻害された (Fig. 1)。この時, ヒメタイヌビエでは出芽深度にかかわりなく表層近傍には種子より抽出した不定根, 中胚軸および茎葉基部が観察されたが, イネでは植えつけた種子の深度付近にのみ茎葉基部が存在していた。この...

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Published in雑草研究 Vol. 45; no. 3; pp. 200 - 206
Main Authors 高橋, 秀典, 小林, 勝一郎, 沈, 利星
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本雑草学会 2000
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Summary:異なる土壌深度から出芽したイネおよびヒメタイヌビエの生育に対するカフェンストロールの作用と本剤の土壌中における挙動との関係を解析した。 減水条件下の田面水に本剤の水溶液を添加した場合 (土壌表面処理) には, イネでは表層近傍から出芽したものは強い生育阻害を受けたものの, 出芽深度の深いものは阻害されなかった。これに対し, ヒメタテヌビエでは, いずれの深度から出芽しても強く阻害された (Fig. 1)。この時, ヒメタイヌビエでは出芽深度にかかわりなく表層近傍には種子より抽出した不定根, 中胚軸および茎葉基部が観察されたが, イネでは植えつけた種子の深度付近にのみ茎葉基部が存在していた。この条件下では, 本剤は土壌表層に「除草剤処理層」を形成し, 処理後の日数に関わりなく固相吸着態および土壌水溶存態のいずれもが1cm以下に存在が認められなかった (Fig. 2)。また, 田面水中および土壌水中における溶存態の濃度は経時的に低下した。 本剤を土壌と均一に混合した場合 (土壌混和処理) には, ヒメタイヌビエは土壌表面処理の場合と同様な生育阻害が認められ, さらに, イネでも, やや感受性が劣るものの, いずれの深度から出芽しても強い生育阻害が認められた (Fig. 3)。この土壌混和処理の場合, 本剤は固相への吸着態および土壌水中での溶存のいずれにおいても土壌深度にかかわらずほぼ均一に分布していた (Fig. 4)。 これらの結果から, 土壌表面処理において, 出芽深度にかかわりなく認められるヒメタイヌビエのカフェンストロールに対する高い感受性は, 出芽に伴って形成され, 土壌表層の「除草剤処理層」に存在する上記諸器官によって本剤が土壌水中から吸収されることにより発現し, また, こうした器官を形成しないイネを除草剤処理層より下に移植した場合には両植物間において顕著な選択性が発現されるものと想定された。
ISSN:0372-798X
1882-4757
DOI:10.3719/weed.45.200