メトロノミックPDTによる遠隔腫瘍の腫瘍増殖抑制

光線力学療法(PDT)の進化系であるメトロノミックPDT(mPDT)は、光増感剤を持続投与しながら微弱光を長時間かけて照射することで、腫瘍特異的に穏やかな細胞死(アポトーシス)を惹起することが特徴である。微弱光で機能するため、埋め込み型電子デバイスによる深部内臓癌への光線力学治療という全く新しい治療技術への展開も期待されるが、現在までに、安定した抗腫瘍効果の報告はほとんどない。そこで演者らはマウス腫瘍モデルを用いてmPDTの抗腫瘍効果について調べた。まず、マウス背部に2つの皮内腫瘍を作成し、片方の腫瘍にmPDTを施行した。他方の腫瘍を遠隔転移腫瘍と見立て、両方のサイズ推移を観察した。波長630...

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Published in生体医工学 Vol. Annual56; no. Abstract; p. S139
Main Authors 桐野, 泉, 青笹, 李文, 山本, 順司, 上本, 伸二, 四ノ宮, 成祥, 守本, 祐司
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本生体医工学会 2018
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Summary:光線力学療法(PDT)の進化系であるメトロノミックPDT(mPDT)は、光増感剤を持続投与しながら微弱光を長時間かけて照射することで、腫瘍特異的に穏やかな細胞死(アポトーシス)を惹起することが特徴である。微弱光で機能するため、埋め込み型電子デバイスによる深部内臓癌への光線力学治療という全く新しい治療技術への展開も期待されるが、現在までに、安定した抗腫瘍効果の報告はほとんどない。そこで演者らはマウス腫瘍モデルを用いてmPDTの抗腫瘍効果について調べた。まず、マウス背部に2つの皮内腫瘍を作成し、片方の腫瘍にmPDTを施行した。他方の腫瘍を遠隔転移腫瘍と見立て、両方のサイズ推移を観察した。波長630nm, 照射強度0.1-0.15 mW/cm2で、24時間、120時間、192時間(96時間×2回)のmPDTをそれぞれ行ったところ、光照射を受けた腫瘍、受けていない(非照射)腫瘍ともに腫瘍増大が抑制され、その抑制効果は光照射時間が長いほど強かった。組織学的 にはmPDT後の腫瘍にはアポトーシスを起こした癌細胞と共にT細胞浸潤、免疫学的細胞死を示唆するDAMPsの誘導を認めた。本研究により、mPDTは直接的(局所的)な腫瘍増殖抑制効果のみならず、遠隔腫瘍の増殖を抑制できることが明らかとなった。このことはmPDTが全身の抗腫瘍免疫を賦活化する可能性を示唆しており、今後、転移進行癌への応用が期待できる。
ISSN:1347-443X
1881-4379
DOI:10.11239/jsmbe.Annual56.S139