東アジア亜熱帯域の雲量極大ゾーンの5月中旬~下旬の急変

1982~1987年の6年間について、5月中旬~下旬の数日間の遷移期間を挟んで、中国大陸から日本付近を通って現れる雲量極大ゾーンの特徴が毎年急変することが分かった。この急変は、インドモンスーンの開始より約1月先立って起こる“東南アジアモンスーン”の開始に関連する大規模な大気循環場の変動に強く影響されていることが示唆された。以下に主な結果を示す。 1) 遷移期間前の雲量極大ゾーンは30°N付近にみられ、上層雲域頻度は低いが、遷移期間後には中・上層雲量、上層雲域頻度はともに華南の海岸域で著しく増加する。ここでの上層雲域のほとんどは深い対流活動に対応している。これと同時に南シナ海北部域では、対流圏下...

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Published in気象集誌. 第2輯 Vol. 73; no. 2; pp. 221 - 239
Main Authors 平沢, 尚彦, 加藤, 内蔵進, 武田, 喬男
Format Journal Article
LanguageEnglish
Published 公益社団法人 日本気象学会 1995
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Summary:1982~1987年の6年間について、5月中旬~下旬の数日間の遷移期間を挟んで、中国大陸から日本付近を通って現れる雲量極大ゾーンの特徴が毎年急変することが分かった。この急変は、インドモンスーンの開始より約1月先立って起こる“東南アジアモンスーン”の開始に関連する大規模な大気循環場の変動に強く影響されていることが示唆された。以下に主な結果を示す。 1) 遷移期間前の雲量極大ゾーンは30°N付近にみられ、上層雲域頻度は低いが、遷移期間後には中・上層雲量、上層雲域頻度はともに華南の海岸域で著しく増加する。ここでの上層雲域のほとんどは深い対流活動に対応している。これと同時に南シナ海北部域では、対流圏下層で南西風が強化され、傾圧帯が500mb以下に限定され、また当領域を含む南シナ海域では対流圏下層の比湿が増加する。 2) 130°E以東でも遷移期間を境にして中・上層雲量や上層雲域頻度が増加し、対流圏下層の南西風の強化、亜熱帯高気圧の軸の南下が起こる。 3) 遷移期間前の中・上層雲量の大きな領域の分布は、亜熱帯高気圧の北縁の南西風とその北側の西風との合流場の違いに影響されて年々変動する。 4) 遷移期間後において、中国中部域での中・上層雲量は対流圏下層の傾圧性が強い年には約60%、弱い年には約20%と年々変動する。 5) 130°E以東で、遷移期間を境にして、雲量極大ゾーンと対流圏下層の亜熱帯高気圧が普通とは逆に北に移動する年があった。
ISSN:0026-1165
2186-9057
DOI:10.2151/jmsj1965.73.2_221