磁気浮上式血液ポンプ内インペラ径方向受動安定ダイナミクスの血流量計測への応用

磁気浮上式血液ポンプは耐久性や血液適合性が高く,機械的循環補助用途として実用化が進んでいる.この血液ポンプの拍出流量を生体の循環状態に応じて制御することで,患者の予後が向上するという報告があるが,体内埋込みが可能なほど小型の計測系で正確に流量を測定することは困難である.本研究では,血液ポンプ内で受動安定支持された磁気浮上インペラの径方向ダイナミクスを直接ポンプ流量推定に応用し,血液ポンプ自体で流量計測が可能なシステムを構築することを目的とする.対象とするデバイスは軸方向制御式の磁気浮上遠心血液ポンプで,径方向インペラ位置は受動的に安定化される.この径方向インペラ受動安定位置と流量の関係を,レー...

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Published in生体医工学 Vol. Annual56; no. Abstract; p. S282
Main Authors 信太, 宗也, 増澤, 徹, 長, 真啓
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本生体医工学会 2018
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Summary:磁気浮上式血液ポンプは耐久性や血液適合性が高く,機械的循環補助用途として実用化が進んでいる.この血液ポンプの拍出流量を生体の循環状態に応じて制御することで,患者の予後が向上するという報告があるが,体内埋込みが可能なほど小型の計測系で正確に流量を測定することは困難である.本研究では,血液ポンプ内で受動安定支持された磁気浮上インペラの径方向ダイナミクスを直接ポンプ流量推定に応用し,血液ポンプ自体で流量計測が可能なシステムを構築することを目的とする.対象とするデバイスは軸方向制御式の磁気浮上遠心血液ポンプで,径方向インペラ位置は受動的に安定化される.この径方向インペラ受動安定位置と流量の関係を,レーザー変位計を用いて調べた.作動流体には,グリセリン水溶液(3.10 mPas)と生理食塩水(0.92 mPas)を用い,粘度の違いによる影響も検討した.計測の結果,回転数1800 rpmにおけるグリセリン水溶液中のインペラの受動安定位置は,流量0-6.5 L/minの変化に伴って0.177-0.374 mmの範囲となった.この変位D [mm]と流量Q [L/min]の間には強い線型相関関係があり(R2 = 0.993),その相関関係式はD = -0.030Q + 0.368となった.同様に生理食塩水中では,相関関係式D = -0.029 + 0.3747 (R2 = 0.975)が得られた.以上の結果より,本流量推定手法は十分な精度を備えると共に,血液粘度の個人差に影響を受け難いという利点を有する可能性が示された.
ISSN:1347-443X
1881-4379
DOI:10.11239/jsmbe.Annual56.S282