医療機器へ向けたDLCコーティングの摺動性および酸・滅菌耐久性評価

近年、医療機器にはSUSなどの金属材料が使われている。しかし、それらの材料で作られた機器は、生体内に挿入する際、摩擦による浸襲が発生する。また、医療現場では一度使用した機器は滅菌を行う必要があり、滅菌処理による機器の劣化が懸念されている。一方、Diamond-Like Carbon (DLC) は、低摩擦係数や生体適合性、化学的安定性等の特性を有しており、医療機器への表面改質手段として期待されている。本研究では、医療機器に用いられる材料であるSUSにDLCを成膜することで、生体に対する摩擦の低減効果および医療現場を模擬した酸耐性ならびに滅菌試験によるDLC膜の寿命を検討した。本実験ではイオン化...

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Published in生体医工学 Vol. Annual56; no. Abstract; p. S399
Main Authors 櫻井, 賢吾, 寺井, 恭一, 並木, 和茂, 中森, 秀樹, 平塚, 傑工, 大越, 康晴, 平栗, 健二
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本生体医工学会 2018
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Summary:近年、医療機器にはSUSなどの金属材料が使われている。しかし、それらの材料で作られた機器は、生体内に挿入する際、摩擦による浸襲が発生する。また、医療現場では一度使用した機器は滅菌を行う必要があり、滅菌処理による機器の劣化が懸念されている。一方、Diamond-Like Carbon (DLC) は、低摩擦係数や生体適合性、化学的安定性等の特性を有しており、医療機器への表面改質手段として期待されている。本研究では、医療機器に用いられる材料であるSUSにDLCを成膜することで、生体に対する摩擦の低減効果および医療現場を模擬した酸耐性ならびに滅菌試験によるDLC膜の寿命を検討した。本実験ではイオン化蒸着法を用いて、SUS基板上にDLC膜を成膜した。試料として、母材であるSUSとSUSにDLCを成膜した試料 (DLC/SUS) の2試料を用意した。摩擦係数の測定は、異なる生体器官への挿入を想定して、大気乾燥状態 (Dry) および生理食塩水中 (Wet) での測定を行った。Dry条件およびWet条件での比較では、DLCコーティングにより摩擦係数が約1/4および1/5に低減した。また、酸耐性ならびに滅菌試験は、SEMの結果より、SUSでは基板表面の劣化が顕著にみられたが、DLC/SUSは表面の劣化がほとんど確認されなかった。従って、DLC膜は酸および滅菌耐性があると考えられる。以上のことから、DLC膜は、医療機器の表面を改善するための有用な技術であることが示唆された。
ISSN:1347-443X
1881-4379
DOI:10.11239/jsmbe.Annual56.S399