ラット実験的脳腫瘍に対するヒト天然型腫瘍壊死因子の抗腫瘍効果
ラットで実験的に作製した脳腫瘍を用いて, ヒト天然型腫瘍壊死因子(nh-TNF)の坑腫瘍効果とその作用機序について検討した. 実験的脳腫瘍はウィスター系ラットにC6神経膠腫細胞を脳内に移植することにより作製した. 検討の結果, 担癌ラットの生存期間は, nh-TNF5,000Uを3回反復して脳腫瘍内に局所投与することにより有意に延長した. 肉眼的にn-TNFは正常脳組織に対して特別な反応を誘起しなかったが, それを投与した脳腫瘍では明らかな発赤が見られた. 病理組織学的にはnh-TNFを投与した脳腫瘍内には充血やフィブリンの形成が観察され, さらに発赤が著しい部位では凝固性壊死が認められた....
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Published in | Journal of Veterinary Medical Science Vol. 58; no. 9; pp. 885 - 891 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | English |
Published |
公益社団法人 日本獣医学会
1996
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Summary: | ラットで実験的に作製した脳腫瘍を用いて, ヒト天然型腫瘍壊死因子(nh-TNF)の坑腫瘍効果とその作用機序について検討した. 実験的脳腫瘍はウィスター系ラットにC6神経膠腫細胞を脳内に移植することにより作製した. 検討の結果, 担癌ラットの生存期間は, nh-TNF5,000Uを3回反復して脳腫瘍内に局所投与することにより有意に延長した. 肉眼的にn-TNFは正常脳組織に対して特別な反応を誘起しなかったが, それを投与した脳腫瘍では明らかな発赤が見られた. 病理組織学的にはnh-TNFを投与した脳腫瘍内には充血やフィブリンの形成が観察され, さらに発赤が著しい部位では凝固性壊死が認められた. また白血球の浸潤, それらの血管内皮細胞との接着像が観察された. 免疫組織学的検査の結果, これらの白血球は好中球とマクロファージから構成されること, また腫瘍血管上におけるintercellular adhesion molecule-1の発現増加が明らかとなった. 以上のことから, n-TNFの局所投与は脳腫瘍に対して抗腫瘍効果を有しており, その作用機序として腫瘍血管への作用が重要であると考えられた. またこの作用には, TNFの炎症性サイトカインとしての側面が大きく関与しているものと考えられた. |
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ISSN: | 0916-7250 1347-7439 |
DOI: | 10.1292/jvms.58.885 |