術後21年目に子宮癌検診を契機に発見された乳癌癌性腹膜炎の1例

症例は64歳,女性.23年前に右乳癌の既往があり,今回子宮癌検診で異常を指摘,産婦人科で精査が行われ胸腹部CTで両側卵巣腫大・傍大動脈リンパ節腫大・腹膜播種結節・多発骨硬化像を認め,CEA・CA19-9・CA125・CA15-3高値を認めた.骨盤MRIでは子宮内膜肥厚は軽度で,腹膜播種や骨転移を示唆するCT所見と解離していた.腹水細胞診でGATA3陽性細胞が検出され,診断的治療のため試験開腹術を施行した.病理組織結果はER陰性,PgR陰性,HER2陽性で,検査結果と臨床経過から乳癌晩期再発の診断で抗HER2療法を開始した.その後腫瘍マーカーの著明な低下,転移巣の縮小を認めたが,治療開始15カ月...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 85; no. 1; pp. 20 - 25
Main Authors 肌附, 宏, 佐藤, 直紀, 荒木, 貴代, 村田, 嘉彦, 横井, 一樹, 村田, 透
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2024
Subjects
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:症例は64歳,女性.23年前に右乳癌の既往があり,今回子宮癌検診で異常を指摘,産婦人科で精査が行われ胸腹部CTで両側卵巣腫大・傍大動脈リンパ節腫大・腹膜播種結節・多発骨硬化像を認め,CEA・CA19-9・CA125・CA15-3高値を認めた.骨盤MRIでは子宮内膜肥厚は軽度で,腹膜播種や骨転移を示唆するCT所見と解離していた.腹水細胞診でGATA3陽性細胞が検出され,診断的治療のため試験開腹術を施行した.病理組織結果はER陰性,PgR陰性,HER2陽性で,検査結果と臨床経過から乳癌晩期再発の診断で抗HER2療法を開始した.その後腫瘍マーカーの著明な低下,転移巣の縮小を認めたが,治療開始15カ月で皮膚転移を認め,レジメン変更をして治療継続した.再発治療開始後24カ月に永眠した.今回,抗HER2療法が一時的ではあるが奏効し,生命予後延長に寄与したと考える.転移巣は原発と異なる組織像を呈することがあり,原発巣断定が困難でも,HER2などのバイオマーカーを有する場合,積極的に治療を検討すべきである.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.85.20