認知症高齢者グループホームのケアスタッフが抱える困難とその関連要因
目的 認知症高齢者グループホーム(以下,GH)のケアスタッフが認知症高齢者との関わりの中で抱える困難とその関連要因を明らかし,GH ケアスタッフへの支援を検討する。 方法 福岡県 A 市の GH 47か所に勤務するケアスタッフ600人に無記名自記式質問紙調査を実施した。回答の得られた333人を分析対象とした。 調査項目は,基本属性•施設環境14項目,GH ケアスタッフ10人の半構成面接より抽出した認知症高齢者との関わりの中で抱く困難27項目。分析は,GH ケアスタッフが抱える困難27項目の因子分析により因子構造を明らかにした。また困難とその関連要因を検討するため各因子の下位尺度の合計点と基本属...
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Published in | 日本公衆衛生雑誌 Vol. 58; no. 8; pp. 583 - 594 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本公衆衛生学会
2011
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Subjects | |
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ISSN | 0546-1766 2187-8986 |
DOI | 10.11236/jph.58.8_583 |
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Summary: | 目的 認知症高齢者グループホーム(以下,GH)のケアスタッフが認知症高齢者との関わりの中で抱える困難とその関連要因を明らかし,GH ケアスタッフへの支援を検討する。 方法 福岡県 A 市の GH 47か所に勤務するケアスタッフ600人に無記名自記式質問紙調査を実施した。回答の得られた333人を分析対象とした。 調査項目は,基本属性•施設環境14項目,GH ケアスタッフ10人の半構成面接より抽出した認知症高齢者との関わりの中で抱く困難27項目。分析は,GH ケアスタッフが抱える困難27項目の因子分析により因子構造を明らかにした。また困難とその関連要因を検討するため各因子の下位尺度の合計点と基本属性•施設環境との関連を分析した。 結果 GH ケアスタッフが抱える困難は,「認知症高齢者との葛藤」,「職場のサポート体制」,「スタッフ同士の葛藤」,「負担感」の 4 因子構造となった。各因子の Cronbach の α 係数は0.75~0.82であり内的整合性が確認された。「認知症高齢者との葛藤」と有意に関連していたのは,将来の不安,介護経験,家族の意向の理解,施設理念の理解であった。「職場のサポート体制」と有意に関連していたのは,辞めたいと思った経験,協力体制だった。「スタッフ同士の葛藤」と有意に関連していたのは,将来の不安,辞めたいと思った経験,協力体制,情報交換であった。「負担感」と有意に関連していたのは,将来の不安,辞めたいと思った経験,協力体制,情報交換,勤務の要望であった。 結論 GH ケアスタッフは,認知症高齢者との関わりの中で様々な困難を抱えていた。ケアスタッフが抱える困難を軽減するためには,GH の施設理念や認知症高齢者に対する家族の意向の理解など教育環境の整備の必要性が明らかになった。またスタッフ間の情報交換や協力体制,個々のケアスタッフが抱える困難に対する個別の支援などの組織的な取り組みが重要であることが明らかになった。 |
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ISSN: | 0546-1766 2187-8986 |
DOI: | 10.11236/jph.58.8_583 |