在宅人工呼吸療法を行う ALS 患者における身体的重症度別の医療・福祉サービスの利用状況
目的 ALS 患者支援のあり方を検討する資料を得るために,身体的重症度の高いA LS 患者を重症度別に分類し,各群の医療•福祉サービスの利用状況を明らかにすることを目的とした。 対象と方法 全国31都道府県支部の患者会の協力により,人工呼吸器を装着した ALS 患者と家族250ケースを対象に,無記名質問紙を郵送で配布して,197ケースを回収した。そのうち,分析対象には,患者が在宅生活,侵襲的人工呼吸器装着,概ね全身不随および経管栄養管理中である139ケースを用いた。身体的重症度の分類は,重症度が高くなる順に,「指先がわずかに動く程度/意思疎通可」,「首から下は全く動かない/意思疎通可」,「眼球...
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Published in | 日本公衆衛生雑誌 Vol. 57; no. 4; pp. 298 - 304 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本公衆衛生学会
2010
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Subjects | |
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Summary: | 目的 ALS 患者支援のあり方を検討する資料を得るために,身体的重症度の高いA LS 患者を重症度別に分類し,各群の医療•福祉サービスの利用状況を明らかにすることを目的とした。 対象と方法 全国31都道府県支部の患者会の協力により,人工呼吸器を装着した ALS 患者と家族250ケースを対象に,無記名質問紙を郵送で配布して,197ケースを回収した。そのうち,分析対象には,患者が在宅生活,侵襲的人工呼吸器装着,概ね全身不随および経管栄養管理中である139ケースを用いた。身体的重症度の分類は,重症度が高くなる順に,「指先がわずかに動く程度/意思疎通可」,「首から下は全く動かない/意思疎通可」,「眼球を含み体は全く動かない/意思疎通不可(最重度群と記す)」の 3 群に区分し,3 群間の医療•福祉サービスの利用状況の相違を検討した。 結果 患者の性別と主介護家族の続柄において 3 群間で有意な差が見られたが,患者と主介護家族の年齢,人工呼吸器装着年数,経済的暮らし向きでは差はなかった。医療•福祉サービスの利用について 3 群間で有意な違いが認められたのは,利用可能なレスパイト入院施設の有無で,身体的重症度が顕著になる群ほど入院施設のあるケースが少なく,最重度群では29%にとどまった。訪問看護,訪問介護,支援費の各利用,利用可能な24時間緊急時対応サービスの有無,ヘルパー等介護職者による吸引行為の実施と入浴頻度については差がみられなかった。患者の外出頻度は 3 群間で有意な差が認められ,「全く外出していない」ケースは最重度群で最も多く62%にのぼった。また,3 群間で有意な差はないが,家族のみで行う介護時間がほとんど24時間365日であるケースおよび介護代替者がいるケースは最重度群で最も多かった。ALS 関連の療養費の自己負担月額および ALS 患者以外の介護や育児の必要性については 3 群間で差がみられなかった。 結論 身体的重症度が高くなる群ほど,とくに最重度群では,利用可能なレスパイト入院施設および社会生活に欠かせない外出の頻度が少なかったことから,身体的重症度がより高い患者が利用できる療養型施設の充実および外出環境の整備の必要性が示された。 |
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ISSN: | 0546-1766 2187-8986 |
DOI: | 10.11236/jph.57.4_298 |