地域在住高齢者における足部に関する問題と転倒経験・転倒不安との関連

目的 介護予防の一環として,足趾•爪のケアに関する事業が行われ始めている。しかし,わが国において,高齢者における足趾•爪に関する問題やそのケアが介護予防に果たす役割については,十分検討されていないのが現状である。本研究の目的は,わが国の地域在住高齢者を対象に,足趾•爪に関する問題と転倒経験および転倒不安との関連性について検討することであった。 方法 地域在住の高齢者10,581人(75.2±5.60歳)を対象に,自記式による質問紙調査を実施した。足趾•爪に関する質問項目は,足白癬,皮膚の炎症•むくみ•変色,爪の肥厚•変形,足趾の血流障害•機能障害,足趾•爪のケアの実施,および適切な靴の着用•靴...

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Published in日本公衆衛生雑誌 Vol. 57; no. 8; pp. 612 - 623
Main Authors 原田, 和弘, 岡, 浩一朗, 柴田, 愛, 蕪木, 広信, 中村, 好男
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本公衆衛生学会 2010
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Summary:目的 介護予防の一環として,足趾•爪のケアに関する事業が行われ始めている。しかし,わが国において,高齢者における足趾•爪に関する問題やそのケアが介護予防に果たす役割については,十分検討されていないのが現状である。本研究の目的は,わが国の地域在住高齢者を対象に,足趾•爪に関する問題と転倒経験および転倒不安との関連性について検討することであった。 方法 地域在住の高齢者10,581人(75.2±5.60歳)を対象に,自記式による質問紙調査を実施した。足趾•爪に関する質問項目は,足白癬,皮膚の炎症•むくみ•変色,爪の肥厚•変形,足趾の血流障害•機能障害,足趾•爪のケアの実施,および適切な靴の着用•靴の調整の実施であった。過去 1 年間の転倒の有無または転倒不安の有無を従属変数,足趾•爪に関する項目を説明変数,年齢,有病状況,老研式活動能力指標得点(実施状況),および下肢機能障害を調整変数としたロジスティック回帰分析を,男女別に行った。 結果 男性の46.0%,女性の39.0%の者が,足趾•爪に関する問題を,少なくとも 1 つ以上回答していた。ロジスティック回帰分析の結果,男女ともに,「足白癬」(男性:調整オッズ比=1.37[95%信頼区間=1.15-1.63],女性:1.29[1.08-1.53]),「皮膚の炎症•むくみ•変色」(男性:1.66[1.32-2.10],女性:1.37[1.13-1.66])「爪の肥厚•変形」(男性:1.72[1.45-2.05],女性:1.48[1.26-1.74])「足趾の血流障害•機能障害」(男性:2.42[1.91-3.05],女性:1.66[1.36-2.04])を有している者の方が,過去 1 年間に転倒を経験していることが示された。また,転倒不安に関しても,それぞれの足趾•爪に関する問題の保有が関連していた(足白癬[男性:1.37[1.15-1.62],女性:1.25[1.07-1.47]],皮膚の炎症•むくみ•変色[男性:1.42[1.13-1.80],女性:1.62[1.34-2.00]],爪の肥厚•変形[男性:1.41[1.19-1.68],女性:1.46[1.25-1.70]],足趾の血流障害•機能障害[男性:2.05[1.61-2.60],女性:2.10[1.69-2.60]])。また,女性においては,足趾•爪の定期的なケアの実施者の方が,転倒不安者が有意に低かった(0.81[0.71-0.92])。 結論 本研究によって,足白癬,皮膚の状態,爪の肥厚,血流障害や機能障害など,足部に関する問題の改善に注目することが,転倒経験•転倒不安の軽減に有効である可能性が示された。今後,足部の問題の客観的な評価を行った前向き研究により,足部の問題と転倒•要介護状態との関連性を検討し,本研究の結果を裏付けることが求められる。
ISSN:0546-1766
2187-8986
DOI:10.11236/jph.57.8_612