女子大学生に妊娠と飲酒に関するリーフレットを1回配布した場合の教育効果
目的 内容を説明せずにリーフレットを一度配布するだけでも教育効果がみられるかどうかを評価した。 方法 F 県にある某女子大学の家政学部栄養学科 4 年生(58人)と選択科目「健康と栄養」の受講者全員(81人)を対象に,非ランダム化比較試験を実施した。まず介入前調査として,妊娠中の飲酒についてどう思うか(妊娠中の飲酒に関する意識),妊娠前後の飲酒についてどうしたいと思うか(妊娠中の飲酒に対する態度),胎児性アルコール症候群(FAS)という病気を知っているか(FAS の知識)について,選択肢でたずねた。1 か月後に,介入群にはリーフレットを配布し,対照群には何も配布しなかった。介入から 1 週間後...
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Published in | 日本公衆衛生雑誌 Vol. 57; no. 6; pp. 431 - 438 |
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Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本公衆衛生学会
2010
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Subjects | |
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ISSN | 0546-1766 2187-8986 |
DOI | 10.11236/jph.57.6_431 |
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Summary: | 目的 内容を説明せずにリーフレットを一度配布するだけでも教育効果がみられるかどうかを評価した。 方法 F 県にある某女子大学の家政学部栄養学科 4 年生(58人)と選択科目「健康と栄養」の受講者全員(81人)を対象に,非ランダム化比較試験を実施した。まず介入前調査として,妊娠中の飲酒についてどう思うか(妊娠中の飲酒に関する意識),妊娠前後の飲酒についてどうしたいと思うか(妊娠中の飲酒に対する態度),胎児性アルコール症候群(FAS)という病気を知っているか(FAS の知識)について,選択肢でたずねた。1 か月後に,介入群にはリーフレットを配布し,対照群には何も配布しなかった。介入から 1 週間後に再び質問紙調査(介入後調査)を実施した。リーフレットの配布と 2 回の質問紙調査は,教員の協力を得て,授業時間中に行った。リーフレットはアルコール•薬物問題に取り組んでいる NPO が作成したものであり,FAS を予防するためには妊娠を考えた時から飲酒を避けることなどをすすめる内容となっている。 結果 有効回答率は83%であった。2 群間で学年や現在の飲酒状況,妊娠やアルコールに関するこれまでの教育機会に有意差はみられなかった。介入群の79%がリーフレットを全部もしくは半分くらい読んでいた。妊娠中の飲酒に対する意識の変化については 2 群間で有意差はみられなかった。妊娠前後の飲酒に対する態度と FAS の知識については,介入群において有意な改善がみられた。 結論 妊娠中の飲酒に対する意識の変化に 2 群間で有意差はみられなかったことは,回答者の75%が栄養学科の学生であったことや,介入前から 8 割近くが「絶対禁酒」と回答していた等,もともと意識の高い集団であったためと考えられた。一方,態度については,介入群では「結婚するなど,妊娠を望んだ時点でお酒を飲まないようにする」と回答した者が介入後は倍近くに増加したことから,リーフレットで学んだ内容を反映していると考えられる。FAS を知った媒体も介入群の半数以上がリーフレットをあげていた。以上の結果から,授業の合間に情報提供としてリーフレットを配布するだけでも態度や知識を改善する効果が得られると考えられた。今回の対象者は 7 割以上が栄養学科の学生という,知識や関心の高い集団であったことから,一般住民に対しても,リーフレットの配布が効果的であるかは今後検証する必要がある。 |
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ISSN: | 0546-1766 2187-8986 |
DOI: | 10.11236/jph.57.6_431 |