寄生虫病学:新規のTrypanosoma congolense種特異的抗原と同抗原の原虫発育ステージにおける細胞内分布の変化

Trypanosoma congolenseに対する7種類の単クローン抗体(mAb)を作成し,異なる発育ステージ(血流型:BSF,プロサイクリック型:PCF,エピマスティゴート型:EMF,メタサイクリック型:MCF)における抗原の細胞内分布を共焦点レーザー顕微鏡(CLSM)を用いて検索した.その結果,mAb 10F9および20H12が認識する抗原の細胞内分布に原虫発育ステージ間での差異が認められた.10F9は虫体の76kDaの抗原を認識し,間接蛍光抗体法(IFAT)でT.brucei gambiense,T.b.rhodesiense,T.evansiに対する交叉反応性が確認された.10F9お...

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Published inJournal of Veterinary Medical Science Vol. 62; no. 10; pp. 1041 - 1045
Main Authors 井上, 昇, 森, 大輝, 長澤, 秀行
Format Journal Article
LanguageEnglish
Published 公益社団法人 日本獣医学会 2000
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Summary:Trypanosoma congolenseに対する7種類の単クローン抗体(mAb)を作成し,異なる発育ステージ(血流型:BSF,プロサイクリック型:PCF,エピマスティゴート型:EMF,メタサイクリック型:MCF)における抗原の細胞内分布を共焦点レーザー顕微鏡(CLSM)を用いて検索した.その結果,mAb 10F9および20H12が認識する抗原の細胞内分布に原虫発育ステージ間での差異が認められた.10F9は虫体の76kDaの抗原を認識し,間接蛍光抗体法(IFAT)でT.brucei gambiense,T.b.rhodesiense,T.evansiに対する交叉反応性が確認された.10F9およびミトコンドリア特異的蛍光試薬による二重染色を施したPCFをCLSMで観察した結果,二つの試薬の蛍光分布が完全に一致した.一方,20H12はBSFおよびMCFの鞭毛,PCFの鞭毛先端,EMFの細胞質の一部を認識し,ウエスタンブロット法(WB)では119kDaおよび122kDaの二つの抗原に反応した.さらに同抗体はWBおよびIFATでT.congolense特異的に反応し,種特異的抗原であることが示唆された.現在までに虫体発育ステージ間で分布が変化する種特異的抗原は報告されておらず,20H12が認識する抗原はT.congolense特異的診断法の開発のみならず,同原虫の発育ステージ分化の分子機構を解明するために有用である.
ISSN:0916-7250
1347-7439
DOI:10.1292/jvms.62.1041