タンパク質のニトロセルロース膜への結合特性

タンパク質のニトロセルロース膜への結合は堅固で, 膜がタンパク質で飽和されるまでは定量的に結合した. 20種類のタンパク質を用いて, このタンパク質と膜との結合特性を解析した結果: 1) この堅固な結合はタンパク質と膜との間の疎水性の相互作用によるものであり, タンパク試料中に含まれる糖, アミノ酸, 二重鎖DNA, グリセロール, あるいは塩類による影響をほとんど受けず, また試料用緩衝液の種類やpHによる影響も少ない, 2) 分子量や等電点の異なるタンパク質であっても膜に結合するタンパク分子の数は1.13~1.98nmol/cm2の範囲内にあり生体試料中の微量タンパク質を簡便に再現性よく定...

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Published in生物物理化学 Vol. 33; no. 6; pp. 293 - 303
Main Authors 中村, 和行, 田中, 経彦, 竹尾, 和典
Format Journal Article
LanguageEnglish
Published 日本電気泳動学会 1989
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Summary:タンパク質のニトロセルロース膜への結合は堅固で, 膜がタンパク質で飽和されるまでは定量的に結合した. 20種類のタンパク質を用いて, このタンパク質と膜との結合特性を解析した結果: 1) この堅固な結合はタンパク質と膜との間の疎水性の相互作用によるものであり, タンパク試料中に含まれる糖, アミノ酸, 二重鎖DNA, グリセロール, あるいは塩類による影響をほとんど受けず, また試料用緩衝液の種類やpHによる影響も少ない, 2) 分子量や等電点の異なるタンパク質であっても膜に結合するタンパク分子の数は1.13~1.98nmol/cm2の範囲内にあり生体試料中の微量タンパク質を簡便に再現性よく定量することができる, 3) また, この堅固な結合は, 非イオン性の界面活性剤により濃度依存的に阻害され, 定量後の膜上のタンパク質を比較的低濃度の界面活性剤を用いて抽出でき, かつタンパク質を高収率で膜から回収できるため微量のタンパク質を用いたタンパク化学的解析が可能となる考えられる. しかしながら, 非常に強い表面荷電をもつ低分子量タンパク質は膜に結合しにくく, その定量は不可能と思われる.
ISSN:0031-9082
1349-9785
DOI:10.2198/sbk.33.293