臨床繁殖学:高速遠心した前核期卵を用いたトランスジェニックウサギの作製

ブタFSHの皮下投与によって過剰排卵を誘起し,hCG投与17~19時間目に採卵して(A)前核が明瞭に識別できた卵子か(B)12,000×g,10分間の遠心によって前核が可視化された卵子,のいずれかに200倍率の微分干渉倒立顕微鏡下で分類した.A卵子の割合にウサギの系統差は認められなかった(JW 72.6%,NZW 79.3%).A卵子の前核は細胞質の中心付近にあったのに対し,B卵子の前核は遠心処理によって偏在させた脂肪顆粒塊の方に少し移動していた.外来遺伝子(5μg/ml,牛αS1カゼイン制御領域/ヒト成長ホルモン構造遺伝子)をJW由来の前核期卵に顕微注入したところ,A卵子の前核の体積は7.4...

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Published inJournal of Veterinary Medical Science Vol. 62; no. 10; pp. 1047 - 1052
Main Authors 平林, 真澄, 平尾, 雅郎, 高橋, 利一, 木村, 建, 平澤, 和男, 上田, 正次, 保地, 眞一
Format Journal Article
LanguageEnglish
Published 公益社団法人 日本獣医学会 2000
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Summary:ブタFSHの皮下投与によって過剰排卵を誘起し,hCG投与17~19時間目に採卵して(A)前核が明瞭に識別できた卵子か(B)12,000×g,10分間の遠心によって前核が可視化された卵子,のいずれかに200倍率の微分干渉倒立顕微鏡下で分類した.A卵子の割合にウサギの系統差は認められなかった(JW 72.6%,NZW 79.3%).A卵子の前核は細胞質の中心付近にあったのに対し,B卵子の前核は遠心処理によって偏在させた脂肪顆粒塊の方に少し移動していた.外来遺伝子(5μg/ml,牛αS1カゼイン制御領域/ヒト成長ホルモン構造遺伝子)をJW由来の前核期卵に顕微注入したところ,A卵子の前核の体積は7.4×103μm3から16.6×103μm3(増加率132%)に,B卵子の前核の体積は6.1×103μm3から15.9×103μm3(同148%)に増加した.移植後の産子への発生率はA卵子(11.1%)とB卵子(11.2%)で差はなかった.Tgウサギの作製効率はA卵子の0.9%(2/235),B卵子の0.5%(1/215)であった(P>0.05).トランスジェニック(Tg)ウサギの作製に際し前核期卵を高速遠心する必要はないものと考えられてきたが,約25%ものウサギ受精卵が高速遠心によって前核を可視化させなければ外来遺伝子の顕微注入に供せないことが明らかとなった.
ISSN:0916-7250
1347-7439
DOI:10.1292/jvms.62.1047