鉄代謝―最近の知見

近年,鉄代謝の分子メカニズムが急速に明らかになってきている.その一つが生体内の鉄量を調節するヘプシジン-フェロポーチンシステムである.フェロポーチンは腸上皮細胞やマクロファージから鉄を血液中に排出するたんぱく質であり,ヘプシジンはフェロポーチンの発現を低下させることで生体の鉄利用を抑制する.もう一つは,IRP(iron regulatory protein)-IRE(iron responsive element)システムである.IREはmRNAの非翻訳領域に存在する高次構造で,このIREにIRPが結合し,鉄関連遺伝子の翻訳を調節する.このシステムにより細胞内鉄濃度に応じて鉄の貯蔵,利用,排出...

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Published in日本内科学会雑誌 Vol. 102; no. 10; pp. 2699 - 2704
Main Author 張替, 秀郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本内科学会 2013
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ISSN0021-5384
1883-2083
DOI10.2169/naika.102.2699

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Summary:近年,鉄代謝の分子メカニズムが急速に明らかになってきている.その一つが生体内の鉄量を調節するヘプシジン-フェロポーチンシステムである.フェロポーチンは腸上皮細胞やマクロファージから鉄を血液中に排出するたんぱく質であり,ヘプシジンはフェロポーチンの発現を低下させることで生体の鉄利用を抑制する.もう一つは,IRP(iron regulatory protein)-IRE(iron responsive element)システムである.IREはmRNAの非翻訳領域に存在する高次構造で,このIREにIRPが結合し,鉄関連遺伝子の翻訳を調節する.このシステムにより細胞内鉄濃度に応じて鉄の貯蔵,利用,排出,取り込みにかかわる遺伝子の発現が調節され,細胞内鉄量が最適化される.さらにミトコンドリアにおけるヘム・ヘム中間体・鉄のトランスポーターも続々と同定されてきており,今後鉄関連疾患の発症機序の解明や新たな創薬が期待される.
ISSN:0021-5384
1883-2083
DOI:10.2169/naika.102.2699